第19話

「こんなに糞面倒なことにぶち当たったのは幾年ぶりだ。凄いぞ。全くやる気が出ん」


威厳もクソもないその様相に、幸人は間抜けに口を開けた。

先程まで、自分を小僧呼ばわりしていた王はどこへ行った。

ふてくされているその様は、見た目の年相応に見える。


しかし、それを許さない者が、この場に約1名いた。


「大王様、死者の前です。だらしない姿を晒すのはおやめください」


片眼鏡男の片眼鏡がきらりと光り、その口からは大王を諫める言葉が放たれる。

大王は気だるげに片眼鏡男を見上げた。


「あア?別に今さらじゃねえか。どうせこの餓鬼とは長い付き合いになる」


意味深に言い放ち、大王は立ち上がった。

身を翻し、扉へと向かっていく。


「大王、どこ行くねん」


オレンジ髪の男が、大王に問いかけた。

大王は目線だけでこちらを振り向くと、わずかに口角を上げた。


耳飾りがしゃらりと揺れる。






「————現世だ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

大王様、裁きの時間です。 @mi-tuki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ