第18話

それは途中までびっしりと文字で埋め尽くされていたが、途中から綺麗に真っ白になっていた。


「ここだ」


閻魔大王は、淡々とその空白部分を指さした。


「ここに本来あるはずの、5年分の記録が抜け落ちている。これは、お前の記憶が抜け落ちていることを意味する」


「俺の記憶が?」


はて?と幸人は首を傾げた。

生前、自分が記憶喪失になった記憶はない。


「自覚はないか?」


幸人は頷く。

大王は、幸人の反応を確かめるように黙っていたが、やがて深くため息をつき、頭にのせていた帽子を乱暴に脱ぎ取った。

帽子を握った手を勢いよく机に打ち付ける。その衝撃で、書類が何枚か宙を待った。


ギョッとする幸人の前で大王はガシガシと後頭部を掻きむしって唸った。

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