第13話

壇上下の餓鬼は、眠りから覚めた直後なのか、しょぼついた目をしている。

うつらうつらとしていたが、徐々に正気を取り戻し、目の前の光景に唖然とし始めた。

大王はその様子をじっと眺めていたが、隣からの視線の圧を受け、ゴホンと咳払い。

餓鬼へと呼びかける。


「小僧、名は?」


問いかけられた餓鬼は、一瞬キョトンと首を傾げ周囲を見渡した後、人差し指を自分に向けて「俺?」と。


「お前意外に誰がいる」


こいつ阿保なのか。


「俺は綾瀬幸人」


餓鬼——綾瀬幸人は、実に真っ直ぐな目をした少年だった。

人間が誰しも持っている歪みの気配が薄い。

流れてくる基本情報から、年齢は十七だと知った。


(妙だな)


大王は目を細めた。

綾瀬幸人の死因は『殺人』とある。

これは、閻魔大王が独自に読み取る情報にも、秘書が持ってきた綾瀬幸人に関する資料にも同じように記載されている。


しかし、こんな実直な瞳をした人間が、誰かに恨みを買うようなことをするだろうか。

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