第12話

「大王様、私、いつも言ってますよね」


地を這うような低い声に、ピンと背筋御伸ばした。

犀は異様な空気を察したのか、「ほんなら俺はこれで~」と逃げるように退出。


あの野郎、後で絶対シメてやる。


「判決を下すのは必ず『裁きの間』でやってくださいと。そうしなければ後々面倒ごとになるのだと。その処理をするのは私なのだと」


ずいと識の顔が迫る。

これ以上なく瞳孔が開かれていた。


「大王様は、私に過労死をお望みで?」


「それは困るな」


優秀な秘書を失っては、地獄の機関が上手く作動しなくなる。

とりあえず素直に「すみませんでした」と頭を下げて機嫌を直してもらい、大王は立ち上がった。

足の痺れを我慢しながら自室を出る。


寝台がすぐ傍にあるのに休めないとはなんという生殺し。

しかし、さっきの今で「休みたい」と駄々を捏ねる程、大王は命知らずではない。

回廊に出て、せっせと大王が暴れた後の修繕をしている極卒たちに「ご苦労様」と声を掛け、『裁きの間』へと向かう。


そこには既に、先ほどの餓鬼と犀が、並ぶようにして壇上の下に立っていた。

大王は二人を流し見ながら、椅子に座る。

傍には識が控え、いつもの裁判の様相が整った。

机の上に放られた巾を頭に乗せ、大王は扇子で机を打つ。


開廷が宣言された。



「これより、再審を始める」

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