第11話

「それに、回廊が随分と荒れていたようでしたが」


ギクリと肩を上げる。

ストレスのために少々暴走してしまったことが知られたら、さらに雷を落とされる。

これ以上睡眠時間が削られるのは勘弁願いたい。

何か上手い言い訳はないかと思考を巡らせる。

しかし、疲弊した頭では出てくるものも出てこない。


さあて困ったぞ。


「失礼すんでー」


そんな時、扉をノックして長身の男——犀が部屋へ入ってきた。

ナイスタイミングと心の中でガッツポーズをした大王は、しかしそれを顔に出すことなく「なんだ」と問いかけた。

犀はガシガシと後頭部を掻きながら「いやー」と口を開く。


「さっきの坊主、一応『中立の間』にぶち込んだんやけど……」


解せぬと言いたげな顔で、犀は首を傾げた。


「何故か〝裁きの押印〟が押されとんねん」


ピシッと空気が凍った。

大王は内心頭を抱える。


全然ナイスタイミングじゃなかった。バットタイミングだった。


「大王、まだあの坊主に判決下しとらんよな?」


盛大に爆弾を投下してくれた犀は、ただただ純粋に疑問に思っているようでとどめを刺してくる。

識の、熱いような冷たいような視線がこちらへ向けられた。


「……下した」


ガツンと地面がへこんだ。

識がどこからともなく取り出した金棒が、地面を穿っている。

こりゃあ後片付けが大変だ、とどこか他人事のように思う大王の首筋に、ひやりと金属の冷たい感触。

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