第8話

「頼む!ちょっと静かにしてくれ!!」


「……」


思わず半眼で睨みつけた。

この馬鹿は、誰に向かってそんなことを言っているのか。


「貴様、俺が誰だか分かって……」


手首を掴み、口を開くが、それもすぐにもう片方の手で塞がれた。


「静かにしてくれっつってんだろ!」


ピキッと青筋が立ったのが分かった。

ゆらりと視界が歪む。

どこからともなく現れた黒い炎が輪を描くように二人を囲んだ。

すさまじい熱気と共に突風が吹き荒れる。

超自然現象の大盤振る舞い、フルコースだ。


「黙るのは貴様の方だ、小僧」


見た目年齢が同じの大王は、少年の襟首をつかんで持ち上げた。

幽霊のくせにその躰はずしりと重く、少年が苦しげに呻く。

大王はそれを冷ややかな目で眺めた。


「死んだからと言って、好き勝手にできると思うなよ。ここでは、俺の機嫌次第で全てが終わり、始まる」


故にこの餓鬼はここで終わる。


「判決。貴様は地獄行きだ」


まあ、多少強引な所もあるので、刑期と罰の重さは軽めにしておいてやろう。情状酌量だ。


適当なことを考えながら少年の反応を確かめていると、不意に少年の顔がぐっと近づいた。

なんだ、と思う間に少年の手ががしりと大王の肩を掴んでいた。

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