第6話

さて、仕事の疲れで思考が幼稚になってきた閻魔大王には、休息が必要であった。

それを、目の下に作られた濃い隈が如実に物語っている。

故に今すぐに自室のふかふかの寝台にて、夢の中に落ちる必要があった。

なんなら今この回廊で寝落ちしてもいいのだが、それでは後で教育係兼秘書である識に盛大に雷を落とされてしまうだろう。

それは、閻魔大王とて避けたいところだった。


仕方あるまいと、重い足をのろのろと動かして回廊を進む。

延々と続く赤壁の廊下を、ようやく左へと角を曲がった時だった。


ふと頭上に影が差し、大王は気だるげに顔を上げた。その瞳が見開かれる。



「「あ」」



声が重なった。ずしんと重い衝撃。


地獄の支配者は、地面に突っ伏していた。————背中に見知らぬ少年を乗せた状態で。


「いってて……」


少年が腰を押さえつつ体を起こす。

どちらかと言えば、痛いのは大王の方である。強かに躰を床に打ち付けてしまった。

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