第3話
「子供っぽいことはおやめください、大王様」
「うるさいぞ、識。俺は疲れているんだ」
「であるならば、ちゃんと自室でお休みください。他の者に示しがつきません」
「他の者って誰だ?」
「他の者は他の者です」
素っ気なく言い放つ秘書を、食えない鬼だと思いつつ、頭が上がらないのも事実。青年は素直に自室で休むことにした。
立ち上がり、椅子から降りる。
耳飾りがシャランと音を立てた。
「大王!」
部屋の扉が勢いよく開き、長身オレンジ髪の男が入室してきた。ノックがない所から察するに、相当切羽詰まっていると分かる。
男は、自分より背の低い青年に合わせて腰を屈めた。
「えらいこっちゃ!罪人の一人が逃げ出しよった!」
「ああ、そうか」
焦り顔の男とは対照的に、青年は実に素っ気なく返事をした。
長身の男は「そうか、やないねん!」とやかましく騒ぎ立てる。
「ただでさえ人手不足っちゅーのに、罪人捕獲のためにまた何人も駆り出されてんねんぞ!みんな対応しきれんで大わらわや!」
「そうか。なら識を向かわせる」
名指しされた秘書は「私ですか?」と目を丸くしているが知ったことではない。
青年は長身の男を通り過ぎて部屋の奥へと向かう。そこに設置されている扉をくぐり、自室へ続く廊下へと出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます