第10話

初日の放課後―――――…




射沙波

「こ、恋羽ちゃん… だよね?


 よかったら、一緒に帰らない??」




射沙波

「 (この一言を言いたくて、

   一目見た瞬間から

   緊張しっぱなしの1日目だったが…


   ようやく言えた!

   俺にかかれば こんなもんだ!


   殆ど教室に人が居ない状況を待って、

   これ以上無いタイミングで言えたぜ!


           ふうっ…!) 」




恋羽

「あ、えっと…」



射沙波

「あっ、そっか!

 遅れてきたから名前知らないんだね?


 俺、イザナミ ユラ って言います

 

 3年間宜しくね!」



恋羽

「イザナミくん ね


 私は淡空 恋羽っていいます


 こちらこそ、よろしくね」





"サラリと軽く揺れる黒髪…


 窓から差す光に照らされた頬…


 天使の存在を如実に物語る、

 にこやかな笑顔…



 うーん、

 この世から窃盗が無くならないワケだ


 これは簡単に心を奪われてしまう


 人の心を盗むのは 悪魔だけではない


 天使もなんだ…"


   …そんな風に、イザナミは思う




恋羽

「よかったぁ


 まだお友達が少なくて、


 北中からここ来たの、私含めて

 4人しか居ないから…」



射沙波

「そっかそっか!


 じゃあ丁度よかった


 雫灯しずかり駅までは一緒だよね?」



恋羽

「うん、じゃあ一緒に帰ろっか」



これは幸先良いスタートと言っていいだろう





ゴクン…





射沙波

「 (先ずはファーストミッション、

   コンプリートだ…


   この調子でいけば、

   いずれは、そのお手手 と

   この手を繋いで

   ・・・なんてことも?



   待て待て待て待て!

   逸るな逸るな!!



   "急ぎ過ぎはターゲットを見失う"

   "足元固めて 心も固めよ"


   中学の魔法理論基礎で習う内容だろ?


      とりま、落ち着こう) 」



恋羽

「イザナミくん?


 どうしたの?

      帰ろ?」





ニコッ! からの… ズキューン!!





射沙波

「 (屈託のない 純白の笑顔


   こんなの炸裂されたら、


   今すぐ抱きしめたくなるだろ!?


   誰だよ "急ぎ過ぎは〜" とか教科書に

   書いた奴は??


   ドSか!? 絶対ドSだろ!?


   我慢しろって方が無理だって!!) 」





…―――――と、

心の中で葛藤するイザナミ



2人は駅に向かって歩く

――――――――――――――――――――…





恋羽

「へぇー、イザナミくんって

 凄いんだねぇ」



射沙波

「まぁね…

 サッカーは切っても切り離せない

 俺のパートナーみたいなもんだからね


 恋羽ちゃんがサッカー好きなんて

 聞いといてよかったなぁ〜」



射沙波

「 (しまった〜…!


  話の流れ的に、やったこともない

  サッカーの経験者で、しかも

  世界が注目するファンタジスタ

  だとか、テキトーなこと言っちまった…


  本当は野球派なんだよな…俺



  これは、ミズイロに助けを求めるしか

  ねぇな…

  アイツ、

  全中でベスト3になってるし…) 」



恋羽

「ポジションはどこだったの?」



射沙波

「んー、真ん中…かな?



 (うわぁ…超テキトー…(汗) ) 」



恋羽

「へぇ〜、ボランチかな?


 体力も凄いんだ? じゃあ」



射沙波

「 (アレ…話通じてるみたい…?


  意外とイケるもんだな…はは)



  体力は無尽蔵!


  走る発電機ダイナモって言われてたから!」



恋羽

「いっぱいあだ名持ってるんだね〜


 今度、イザナミくんの試合見たいなぁ」



射沙波

「 (あ…やっぱそーなっちゃうよね…


  でも、、、) 



   高校では部活入る予定無いからなぁ


   残念だけど…」



恋羽

「そうなんだぁ…勿体無いなぁ


 でも、毎年 林間学校でサッカー

 やるみたいよ?

     ・・・この学校」



射沙波

「 (な…何ですと!?



   それは参った!

   ミズイロ先生、ヘルプミ〜!!) 」




恋羽

「あ、じゃあ私 こっち方面だから

 

 また明日ね、イザナミくん!」




射沙波

「またね、恋羽ちゃん!」




―――――…



イザナミは思う。




 "俺の高校生活は 

  恋羽ちゃんと共にある



  あの笑顔を独り占めしたい"




そう、心から思えた 初日の出来事…

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