第14話

自分の部署につき、飯田カレンと一緒に入る。


自分のデスクに行くと、書類を整理して、パソコンの電源を入れる。


飯田カレンとは隣同士だ。

だから、構わず、飯田カレンが会話を続けてくる。


「もう、大阪の取引相手が無茶な要求をしてきたんだけどー…。

それも、田中さんが助けてくれてー…。」


「へー…。」


上の空の返事をする。


「真緒?なんか、具合が悪いの?」


「うーん、なんか、ぼーっとするんだよね。」


「え!?大丈夫?」


「大丈夫なような…うーん…。」


血を吸われたことによる貧血だとはこのときの真緒は分からなかった。


「会議が始まるまで、休んでたら?」


「うん…。ありがとう。」


真緒は椅子に座り、机に体を寄せ、目を閉じる。


しばらく時が経つ。


そして…





【お前が消えれば!!!!】


突然、脳の中に見知らぬ男が現れ、自分に襲いかかって来る映像が流れた。




「ヒッ!!!」


驚きとともに、バッと目を開く。

呼吸が一気に荒くなる。


今のはなに!!?

男だけど、見たこともない人。

恐ろしく冷酷な顔をしていた。



「……。」


真緒は恐ろしくなり、目を閉じるのはやめることにした。


「あれ?真緒、休憩はもう良いの?」


「うん、なんか、元気になった!

会議が始まるよね?そろそろ行こう!」


書類を手に取り、慌ただしく立ち上がる。


「うん、真緒が大丈夫なら、行こう。」


飯田カレンは真緒の様子に首を傾げながらも、特に気にする理由も無いので、深くは追求しなかった。



会議室に行くと、中にはまばらに人が入っていた。


「何処に座るー…「あっ!柊木さん!」


真緒が言う前に、飯田カレンは席についていた柊木敦に声をかける。


「カレンちゃん。やあ。」


柊木は爽やかに挨拶をする。


「柊木さんも、もう来ていたんですねー♪」

「そうなんだよ。今日は成果報告だから、早めに来て確認をね。」

「さすが柊木さん!」

「ははっ。」


楽しそうに会話をする二人。

随分と仲が良いようだ。


「佐藤さんもおはよう。

昨日は本当にありがとう。」


「おはようございます。飯田さんの代わりですから。」


社交辞令の笑みを浮かべる。


「あ、そうだ!

カレンちゃん、提案なんだけど、親睦も兼ねて、飲みに行かない?」


「二人でですか!?」


「いや、カレンちゃんと佐藤さんと俺と俺の同僚で。」


「ですよねー♪」


「カレンちゃん、彼氏いるから、俺と二人で飲みに行ったら怪しまれるでしょ。」


「そうでしたー。

柊木さん、イケメンすぎるので、絶対に彼氏が怪しみます。」


「カレンちゃんはお世辞がうまいね。」


「お世辞じゃないですよー。」


この二人って、仲良しだな。

そりゃ、新入社員研修でお世話になっていれば当たり前か。


「真緒、今日は飲みに行けるのー?」


「ヘッ!!?」


いきなり会話に混ぜられ、間抜けな返事をする。


「今日は予定がー。」


「そうなんだ。

なら、明日は?」


暫く考える。


「明日なら大丈夫かな!」


「決まりだね。

佐藤さんとあまり話したことが無いから、楽しみだな。」


「え?ぁあ!

私も楽しみにしていますね。」


勝手に飲み会の話が進んでいたが、明日なら良いかと了承した。



柊木さん、私なんかと何を話したいんだろうか?

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