第11話

赤い瞳に見つめられて息もできない。

自然と体に力が入る。

恐怖?緊張?

戸惑いも許さないほどに、その瞳に魅せられる。




「真緒の血を定期的に飲ませてくれないかな?」


「!!!!???」


真緒の動きが止まる。


「良いよね?」


「はあー!!??」


「俺に他の人間の血を吸って欲しくないでしょ?

暴走して、殺人鬼になって警察に逮捕されちゃうよ。

そんな事になったら、国王を助けるどころか、敵対勢力に国を乗っ取られてしまう…。

真緒はそんな事になったらどう思う?」


「う…。」


駆け引きだ…

どっちに転んでも最悪。


見放しても後味が最悪で、一生後悔していまいそうだ。

色んな人の血を吸って殺人鬼になるか。

それで、逮捕されたら、”奇跡の血”とやらを探せず、ルキのお父さんが死ぬ。

敵対勢力に国が乗っ取られてしまう。

物語でいうと、バットエンドで終了だ。

あまりにも残酷だ。


しかし、協力しても血を吸われる。

私の身が持つのか?


決断するしか無い。












覚悟を決める。


「良いですよ。」


我ながらお人好しすぎだ。


「本当に!!??ありがとう!」

ルキはニコっと笑う。


所々、可愛い。

本当にルキという男には翻弄される。


「もう一つ良いかな?」


キラッとした瞳で言う。


「なんですか?」


「俺、拠点が欲しいんだよね。

だから、此処の家を拠点にしていいかな?」


「拠点って?」


「つまり、しばらくこの家に居させてもらえないかな?」


「はあー!!!???」


何度目かの絶叫が響く。

もう深夜なのに近所迷惑なのも忘れる。


「もちろん、タダとは言わせない。

何でも言うことを聞くよ。」


「何でも!?」


「うん。俺にできることなら♪」


「吸血鬼に求めるのが怖いです。」


「血を吸う以外は普通だよ。」


「はあ…良いですよ。」


もう、なんとでもなれといった様子で返事をする。


「これからよろしくね。真緒。

俺のことはルキでいいよ。」


ルキは手を差し出す。どうやら、握手のつもりらしい。


「はい、よろしく、ルキ。」


真緒はルキの手を握ろうとする。

すると、突然、ルキは真緒の手を取り、グイッと自分の方に引き寄せる。

そして、真緒を抱きしめた。



「なな!ルキ!!?」


いきなり抱きしめられて、真緒は混乱する。


「真緒、本当に助けてくれてありがとう。」


ルキは真緒の耳元でささやくように言う。


「そそそ…そんなこと!」


耳を真っ赤にしながら真緒は言った。


「本当にありがとう…。」


ルキは笑っているようだが、真緒の方からは見えない。


「私で良ければ助けになりますから。」


「そう…。なら、遠慮なく。」

「え?」


キラリと牙が光る。


ガブッ!!!



「ーーーッツ!!!」


突然、さっき体験した激痛がまた襲う。


フラッと真緒はルキの腕の中に倒れ込んだ。



ーーーーーーまた?

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