第12話


「健太だ…。」


小さな声でななみは言った。


「ケントさん!?」


「カイくん、おはよう。」


ニコリと笑顔で受付の男に挨拶する。


「あ…。」


昨日会った、健太だ…

良かった!ちゃんと、会えた!

でも、今日は少し昨日と雰囲気が違う。


「来てくれたんだね。」


ヴィトンの高級スーツに身を纏ったケントはななみに近づく。


「…昨日のことで…。」


ななみは喋りだす…


ケントがななみを見ると、カルマがななみの手を掴んでいることに気付く。


「ななみちゃん、こっちにおいで…。」


カルマを軽く睨むと、ななみの手を掴み、無理やり自分の方に引き寄せた。


「あっ!」


ケントに抱きしめられるような形になった。


「!」


一瞬の出来事に、カルマの目が見開かれる。


ケントとカルマの目が合う。

バチッと火花が散りそうな雰囲気だ。


「え!!?」


ケントにいきなり抱きしめられ、ななみは顔を赤く染める。


「ななみちゃん、こっちでゆっくり話そうか?」


耳元で囁かれる。


「う…ん…。」


何がなんだかわからず、とっさの返事をする。


「カイくん、VIPルーム使わせてもらうね。」


爽やかに告げる。


「え!!?はい!分かりました!!」


カイは慌てふためきながら了承した。


「さあ、ななみちゃん、行こう。」


顔を近づけて、言われる。


そして、腰に手を回された。



健太の手が腰に…

なんで!?


「え、あ、うん。」


ケントの行動に翻弄されながら、ななみは大人しく頷いた。



カルマは2人の行動をじっと観察する。


「ねえ、カイくん、ケントのあの目、見た?」


「はい、俺、ケントさんのあんな怖い目、初めてみました!」


「クク…ケントがあんな目をするなんてね…

あのななみって子、気になるなぁ…。」


カルマはニヤリと笑った。



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