第10話

エレベーターに乗り、5階へと進む。


チンっと音と共に、エレベーターのドアが開く。


暗いけど、煌びやかなシャンデリアと豪華な内装が目の前に広がる。


まさに、外の世界とここは別世界だった。


「う…わっ…。」


ななみはその豪華さに圧倒される。


呆然と立ち尽くすななみに、1人の男が話しかける。


「いらっしゃいませ。」


「はっ!えっ…⁉︎」


「ここに来るのは初めてですか?」


「は、はい!」


「そうですか。

先ずはこちらで受付をお願いします。」


「えっ…と、分かりました。」


言われるがまま、受付の場所に来る。


「身分証のご提示をお願いします。」


「はい…。」


身分証を見せると、男はななみの顔を見て、システムを話す。


ななみは黙って聞いていたが…


ここには飲みに来たわけではない事を思い出した。


「あの!」


「はい?」


「人を探しているんですけど!」


「えっと、お気に入りのホストを探しているんですよね?」


男はそう言って、首を傾げる。


ここはホストクラブだ。

なんら、おかしなことは言っていない。


「そうじゃなくて…

ここに、ケントって人は居ますか⁉︎」


そう言って、金色の名刺を男に見せる。


「こっ、この名刺は‼︎⁉︎」


名刺を見た瞬間、男の顔色は驚いた表情になる。


「なぜ、あなたがこの名刺を‼︎⁉︎」


「バックの中に入っていたんです。」


「ハハッ…それは可笑しな話ですね。」


「あの、ケントって人に会えますか?」


「この名刺は、選ばれた人しか持っていない筈…」


ブツブツと男は独り言を言う。


「あの…ここにケントって人が居ないなら、いいんです。

帰りますから…」


「えっ、どうしよう…ケントさんの大事なお客様だったら…ああ、でも、見たことがない顔だし…ぁあ。」


独り言が多くなる。


ななみは苦渋の表情になる。


もう、帰ろうかな…



そう思ったとき!



「どうしたの?

何か、トラブル?」


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