第20話

私は震える手でノートに手をのばした。



よく似ているだけのノートで、図書室で見たものとは違うかもしれない。



そんなことを心の中で願いながら、ノートを開いた。




「ひっ……!」




中はやっぱり真っ黒なもの。



だけど、私が恐怖の声をあげたのはそこではない。




昼間は何も書かれていなかったものが、今は誰かが書きなぐったような字が、1ページいっぱいに白い文字で並んでいたのだ。




「な、なによこれっ!」




すぐにノートを投げ捨てようと思った。



だけど、不気味な文字の中に『杏奈』という自分の名前を見つけてしまったから、投げ捨てるのを躊躇してしまった。



引出しにしまったはずのノートが私のカバンに入っていた恐怖よりも、好奇心のほうが勝つ。




私は読みにくいその白い文字を、最初からゆっくり目で追って読み始めた。

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