第7話

「ただいま」

「——おかえり、牡蠣皿に移しておいた」

「おっ、サンキュー」



さっきの男前の声はどこへやら。


ハフハフしながら牡蠣を堪能してるよ。


あの声は、私に使うことはないんだね。


分かってるけどさ



・・・でも



”やりまくって楽しもうぜ”


昼間のあれは、同じくらい低い声だったな。



ああゆうの、——彼女と二人っきりの時に耳元で囁いたりしているのかな。



「なあ?」

「うん?」

「修学旅行いく?」

「・・・・行かない・・・かな?」



行かないってか…行けないって言ったほうがいいかも。

うちにはそんなお金はない。



「じゃ俺もいくのやめようかな」


な・・・何言ってんだ。


「何言ってるの、ダメだよ」


「だってさぁ、ここでもこんなに寒いのに…なんでわざわざ海外行って寒い思いしながらスキーしなくちゃいけないの?北海道でいいじゃんね?」


「まあ、そうだけど・・・。でも、行けるなら行きなって」


「ううん、行かない。もう決めた。彼女と旅行でも行った方が勉強になりそう」


「・・・なんの勉強?」


「社会勉強という名の————女心?」


「さいですか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る