カクテル 2

さよなら、大好きだった人

第13話

オーナーもそれがいいじゃん!と話をまとめてしまい、明日荷物を取りにいくことを琢磨に連絡して、この話は終わりになった。


 三浦さんから聞いた話だと、私を連れて帰るために昨日も早めに上げてもらったらしく、今日も明日に備えて閉店作業をせずに一緒に帰れることになった。


 車まで一緒に歩く道のりはなぜか無言で、琢磨さんだったら気になって話題を考えてしまう沈黙が嫌じゃなかった。


 車に乗り込んでやっと三浦さんが口を開いた。


「真穂は、まだあいつに未練あんの?」


 支払いを済ませた車をパーキングから走らせ落ち着いた街並みを走っていく。


「……わかんない。簡単にはい、さよならってなかったことにできる恋ではないよね」


 人生の中でみたら1年ちょっとの付き合いで、同棲半年、あと何年かしたら痛みもなくなる恋愛かもしれないけど、初めての彼氏で今の私には強烈な痛みを残した相手だった。


「……真穂、気分転換にドライブ行くか。明日休みもらったし」


「え、行くの?」


 三浦さんは自宅に向かっていた進路を変更して、慣れた運転で車を進めていく。


 行き先は決まっているみたいなので、私は窓から見える景色を眺めながら、少しだけ考え事をしていた。


 景色がどんどん変わり、自然が増えてきたな―と思ったら車はどんどん坂を上って高いところを目指していく。


 そこでようやくどこに連れて行こうとしているのかわかった。


 円を描くように登っていく景色の途中から見える夜景はキラキラ光ってとてもきれいで、三浦さんは一番きれいな景色でみられる場所を目指して運転を続けた。


 高台に辿りつくと、深夜3時を過ぎていたため夜景を見に来たのは私たちしかいない状況だった。


 冬の深夜は寒いので、このまま車の中で夜景を楽しむことを選択した。




「……真穂はさ、あいつのどこに惹かれたの」




 ぽつりと話した三浦さんの声が小さいのに威力があって、一瞬びくっと肩を震わせた。


 どこが良かったのか、どこだっけかなーの真剣に考えてみたけど、三浦さんが納得してくれる答えを提示できそうにない。



「大人で余裕があって優しくて仕事もできてってところに惹かれたはずなのに、結局今、こんな別れ方強いられて、全然大人でもないし余裕もないし…」


「…………」


「三浦さんの方が大人だし余裕があるし優しかった。だから、三浦さんが納得できる惹かれたところが今はわからない」


「……真穂がどんなところをあげたって、俺は納得なんかできないけどね」


「え?」


 真剣な目に見惚れてる間に、三浦さんが発した言葉を私は聞きとることができなかった。


「全然大人でも余裕でもないし……」





 私が三浦さんの声に反応した一瞬の間に、頭の後ろに回された手が私を引きよせて、唇を重ねていた。

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