子犬を拾います。
第10話
琢磨さんからのラインは今日1日に大きなダメージを与えた。
仕事のミスだけは絶対しないように注意して、なんとか今日だけを乗り切ることを考えてやりきった。
今日が金曜日でよかった。
少しの間でも琢磨さんと顔を合わせるのは避けたかった。
もう心はボロボロにされて、これ以上傷ついたら死んじゃうよって悲鳴をあげてたもん。
今後のこと、落ち着いて考えないと。
三浦さんに相談してみようかな…。
顔をあげたら、会社の前に止めたベンツの前に立って私を待っている三浦さんと目線があった。
その姿がまるで雑誌から飛び出したモデルみたいにカッコ良くて、私以外の女性社員も見惚れて声をかけたがっているのにも気づいた。
なのに、三浦さんはそんな視線に気づいたそぶりもなく、私に笑いかけるの。
自分が三浦さんの特別なんじゃないかって錯覚するぐらい、甘やかされていると思う。
顔見た瞬間ほっとして、涙がまた出そうになるのを誤魔化すように三浦さんのところに走っていき、「お迎え、ありがとうございます」と俯いた顔で言うと…。
――――グイッ
頭に腕が回り、三浦さんの固い胸板に抱きしめられていた。
「……なんかあった?」
「ちょっと、だけ。あったかな」
「言えよ。助けてやるから」
「……うん、もう少し落ち着いたら聞いてもらおうかな」
今は、泣くのを堪えるので精一杯で話せない。
三浦さんの腕の中が優しすぎる。
すぐに変化に気づいてくれる三浦さんの優しさで涙腺壊れちゃうかもしれない。
助手席の扉を開けて私を座らせると、過保護な三浦さんはシートベルトまでつけてくれて、運転席に回るとゆっくりと車を走らせた。
「三浦さんはこのまま出勤ですか?」
窓の外を流れる景色を眺めながら話しかけると「そうだよ」と返事が返ってきた。
”私も一緒に行ってもいい?”
「真穂も一緒に行こう。オーナー心配してたし、家に1人で置いておくの心配だし」
私が聞きたかった言葉を口にする前に、三浦さんが欲しかった言葉をくれた。
「三浦さん、わたしのせいで今日遅刻?」
「オーナーと話はついてるから大丈夫だよ」
「金曜日なのに、こんなに三浦さん独占してたら怒られちゃうね」
「……いいじゃん、もっと独占してよ」
意地悪く笑う三浦さんを素直にカッコイイと思った。
琢磨さんの方が年上で、大人の余裕と優しさに惹かれたのに、今はそれが偽物になるぐらい傷ついて、好きだったことを後悔してる。
大好きな人だったから、終わるにしてもこんな終わり方はしたくなかったよ。
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