第8話
2皿ずつ用意されてるから、きっと私の分もある!と解釈して三浦さんの向かいの席に座ると、ミルク多めのコーヒーを置いてくれた。
「三浦さんありがとう!いただきます!」
手を合わせて用意された朝食を口に含むと、すっっごい美味しい!
三浦さんが私の様子を見ていることなんて気づかず、私は夢中で朝食を味わった。
「すっごく美味しい!三浦さんはなんでもできるね」
「ありがとうございます」
意地悪く笑いながらブラックコーヒーを口に含む。
いつもはセットされてる髪が今日は無造作に下ろされていて、初めて見る前髪がある三浦さんのギャップに少しだけドキッとした。
三浦さん、髪の毛下ろしてるといつもより幼く見える。
髭も薄いし肌もきれいだから、余計に実際の年齢よりも若く見られるんだろうな。
「いいね、三浦さんちに泊まれば豪華な朝食付きだね」
お泊りいいかも~なんて暢気に言ってた私は一瞬見せた三浦さんの男の目に見られた気がしてドキッとした。
おかしい、昨日のことは覚えてないはずなのに、なんでか三浦さんの目線や手を意識してドキドキしてくる。
「お代は体で払ってもらいますが、それでも良ければいつでもお泊りください、姫」
「もう嫌です!もう自棄酒しないし、お泊りもしないから大丈夫!」
「えー残念」
とかいいながら、面白がってからかってるのが見え見えです。
朝食を食べ終わると出社にちょうどいい時間になっていたから、三浦さんに申し訳ないけど洗いものとか任せてマンションを出ようと思っていた。
「三浦さんありがとう!ごめん、洗いものも何にもできてないんだけど、そろそろ会社に行きたくて…」
「ん、いいよ。先に玄関行ってて」
駅まで案内してくれるのかな?なんて思ってたら、ライダースを着た三浦さんがブーツを履いて、私の後に続いて外にでた。
「駅まで案内してくれるの?」
「うんん、会社まで送ってくよ」
「え、どうやって?」
「バイク」
「え……」
その場で立ち止まった私に気付いた三浦さんは腕を掴んで、抵抗も文句もさせてくれず、三浦さんのバイクが置かれている駐輪場まで連れてきた。
「怖い!怖い…!無理!」
その場で踏ん張って抵抗する私にしびれを切らした三浦さんは抱き上げて、無理やりバイクの後部座席に座らせると、スポッとヘルメットをかぶせた。
三浦さんもバイクに股がりヘルメットを被るとエンジンをかけるので、私はもう覚悟を決めるしかなかった。
「怖い怖い怖い…」
と何度もつぶやく私に「怖いならしっかり捕まっとけ」と腰に腕を回させて、ゆっくりとバイクを走らせた。
三浦さんの腰は見た目以上に締まっていて、固かった。
バイクは風を切って走るから体に当たる部分は寒く感じるのに、三浦さんの背中に触れている部分は温かく感じた。
意外とこの時間が心地よくて、琢磨さんとだったら味わえない貴重な体験だった。
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