第14話

「何してんの?」


聞き覚えのある声


見たことのある顔


吉野先輩の姿が、そこにはありました




「あの・・・」


私の言葉をさえぎるように、告白してきた男子は言いました


「見て分かんない?」


2人のこの雰囲気を邪魔されたのが面白くないといった風に、顔をしかめて



「彼女になってもらおうって告白してたんだけど」



ここで、先輩が止めに入ってくれたらいいのにな


無理だよね


別にサークルの先輩っていう間柄以上に何もないんだから


止める理由が無いよね


しかも、人のことには無関心みたいだし



でも先輩の口から出てきたのは意外な言葉でした


「それは、無理だな」



「は?何言ってんだよ、いくら自分がもてるからって、あんたにそんなこと言われる筋合いないだろう?」


この男子も、さすがにモデル並みのルックスの持ち主の吉野先輩のことは知らないわけでは、なかったみたいです



「いや、そういう意味じゃなくて」



「なんだよ、じゃあ、どういう意味だって言うんだよ?」



「彼氏なんで」



先輩の口から出てきた言葉に

その時一番驚いたのは

言うまでもなく私でした



か、彼氏?!

せ、先輩が?!



付きあおう


とか


もちろん


好きだ


とかだって言われたことないのに


どうして、そんな?!



「でも、香山さん、付き合ってる人いないって・・・」


その男子の声は、遠のいていきました


先輩が、繋いでくれた手によって




繋いでくれた手




えー?!


先輩と手繋いでる



夢なら覚めないで欲しい


ずっと、ずっと握っていて欲しい



頭の中は、ぼーっとしつつも


そんなことを考えていました




でも、しばらく歩いたところで


その手が離れました




「悪いな」


「え?」


何が?

むしろ手ならずっと握ってて欲しかったんですが


「勝手に2人の間に入るような真似してさ」



いえいえ、むしろ助かりました

どうやって断ろうとしても、私じゃ断りきれないんですから



「彼氏とでも言わないと、香山は断りきれなくて、また付き合いそうだったから」



はい、図星です



っていうか、なんでそこまで見通してるの



「言うときは、ちゃんと言うから、お前も言えよ?」



え?


言うときは言うって、なんのことですか?

私も言わなきゃならないって、どういうことですか?

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