第11話

早めに行って、先輩を待ちました


教室内の一番後ろの窓際を陣取って


入口から入ってくる人たちの中から


先輩の姿を探そうと思ったので




でも、なかなか先輩は現れてくれません



講義の時間はどんどん迫ってきます



困ったな


どうしよう



そう思いながら先輩のノートをぱらぱらとめくっていると


「あー良かった間に合った」


と息を切らせながら人影が近づいてきました


見上げると


吉野先輩が肩で息をしながら、私の横に立っています


「ここ、いい?」


そう言って私の隣の席を指す先輩



今日も隣に座れるの?

というか、私の隣に座ってくれるの?



先週の講義の時と同じように

ドキドキしだす心臓の音が止まりません


「ど、どうぞ」


ぎこちない笑顔を無理やり作った私の真横に


先輩は、鞄を机に置いて、どかっと座りました



嬉しくて顔がにやけているのが自分でも分かったので

私は、下を向いたまま

吉野先輩にノートを差し出しました


「あの、ノートありがとうございました」


「あぁ、俺の字読みづらく無かったか?」


「いえ、とても見やすかったです」



そのあとの会話が続きません


他の男子なら、別に会話が続かなくても気にならないし、普通に話せるんですが

やっぱり、吉野先輩は別格です



聞きたいこととか

ほんとは色々あるんだけどな

血液型とか身長とか誕生日とか



でも、きっと先輩はそういうの

嫌がるだろうな


と思うと聞くこともできず


そうこうしているうちに、講義が始まりました



先週ほどの緊張は、していなかったので、今日は、私のノートをとるペンも進みます



講義の内容も、この日はちゃんと聞いていました


そして、先輩のほうをこっそり見ることもできました



さすがに横顔をまじまじと見ることはできなかったので


先輩の腕とか

ペンを持つ指とか



華奢だなぁ

指も細くて長くて綺麗な手だし



そんなことを思いながら

講義を聞いていると

先輩が唸るような声をあげました


「うーん…」


どうしたのかなと思い先輩のほうに目をやると


何度も目を細めて黒板を見ています


そして、私のほうに視線を向けました


突然のことで心臓が、またうるさく音を立て出しました

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る