第14話

「…くっ」


また彼は眼鏡の奥の瞳を細めた。


「すごい警戒してますって顔ですよ」


「あ、え?」


顔に出ていたようだ。


マスク不要になってきたこのご時世、1人でカフェに入ったあとはマスクを外していた。


おかげさまで顔は見られ放題だ。


「ごめんなさい、今まで男性に名前を聞かれるなんてなかったので…」


思いがけない指摘に早口で答える。


あーもう、誰かこういうシチュエーションになったときのことを教えておいてはくれないだろうか。


ってか!心の声喋っちゃったし!


「可愛いなぁ…」


「え?」


「いえ、なんでも」


頬杖をついた彼が何かを言ったようだが、私には何も聞こえなかった。

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