第11話

母が亡くなり父と二人で暮らすようになってから数日たったある日、私はどうしても確かめたくて母のことをどう思っていたのかを父に尋ねた。


すると父は嫌悪の表情を浮かべながら、母の事など愛していなく、死んでくれてホッとしたと無情な言葉を吐き出したのだ。


昔から容姿端麗で美人だった母と結婚でき、優越感に浸っていたのだという。



最初はそれなりに愛情があって結婚をしたのだが、母の父への異常な執着心が日に日に増してゆくのが父は窮屈に感じていたらしい。






二人の事を何も知らなかった無知な自分に嫌気が差した。






誰かを想うのは自由な事だと思う。


けれど、父の中途半端な行動が母の死に繋がってしまったのだと堪えられなかった涙を流しながら私は父に伝えた。


すると父は激怒し私に罵言を浴びせた。






「いつもヘラヘラ笑って気持ち悪いんだよ。誰にも愛されてねぇくせに」



「顔はあの女に似て美人だからな……一体何人の男をたぶらかすんだ?」






母に似ている私の顔など見たくないらしい。


金は出すから進学するなり就職するなりしてさっさと出ていけ、と言われてしまう。

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