第9話
私は貴女の娘なのに、どうして私を他人扱いするのだろう?
私がいるよ……そう言ったらお母さんがどう思うのかは、なんとなく予想できてしまい言えなかった。
傷つきたくなかったから。
私は泣きながら謝った後に「理由を教えて」と母に懇願した。すると母は漸く話してくれた。
母が泣いている理由は案の定父の浮気だった。しかし私はどこか冷静だった。
心のどこかでいつかこんな日が来るのではないかと思っていたから……。毎晩遅いのも恐らく浮気が関係しているのだろう、と。
ふと、母の足元に視線を移すと注射器のような物が目に入った。母の腕を見ると跡がたくさんあり、よく見ると床に白い粉のような物も散らばっていた。
母は薬物に手を染めてしまったのだ。
私は日に日に強い焦燥感に駆られていた。殴られても蹴られてもどこからか手に入れてくる薬物を取り上げて、母を救う為に一生懸命に父に見つからないように努力した。
だが、そんな努力も虚しく散ってしまう。
母が落としたであろう注射器や粉が父に見つかってしまった。
父はすぐさま警察に連絡を入れた。
もう、戻れない……いや、最初から何もなかったのかもしれない終わりから終わりへと向かっていただけだったのだと思う……。
母はすぐに警察へと連れて行かれたが初犯だったためにすぐに出る事ができた。けれどあれから父と母の間には会話が全く無くなってしまった……。
相変わらず父の帰りは遅い。
けれどそれを母は特に責めることもせずにただ脱け殻のように毎日を過ごしていた。
悲しみが徐々にに父への怒りへと変わっていった。お父さんがお母さんを大切にしてあげればこんなことには……と。
私はお父さんとお母さんが幸せならそれでいい。
ただそれだけのことなのにこんなにも難しいことだったのかな?
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