孤独

第7話

母は私のことなど眼中にないくらい父のことがとても大好きだった。そんな母はいつもお酒を飲み顔を赤くさせていた。


まだ小学生の時、明日はお弁当だと伝えると母は決まって少し不機嫌な顔つきになり私に小銭を渡す。


そんな母に私はいつも笑顔で、ありがとう!と言いコンビニで適当に食べ物を購入する……これが当たり前だった。


母のお弁当を食べた事は私の記憶の中では無いに等しい。もちろん作ってほしいと思う……けれど、そんな我が儘を言って母に嫌われるのが怖かった。






父が風邪を引いたとき、母は一生懸命に料理をしていた。父に付きっきりで看病をし、私には見せない女の顔で優しく微笑むのだ。


けれど、そんな母に対して父は顔を歪ませており、私はずっとそれに違和感を感じていた。






父はいつも帰りが遅い。


その日は父が帰ってきたら起こすように母に頼まれていたため、母を呼びに行こうとするが父は私を止めた。






「面倒臭ぇから起こすな。部屋まで静かに戻れよ」






不機嫌に顔を歪ませ冷やかな声でそう言った。


父の言葉を聞いてとても悲しくなった私は沈んだ心のまま、母が起きぬよう静かに部屋へと戻った。






このことは当然、母に言う事など出来ず、後ろ暗い思いを抱えたまま時が経ち私は中学生になった。

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