未来人曰く「今日告白してくる運命の相手と結ばれないと世界が滅ぶ」らしい

岡 あこ

第1話 プロローグ1

佐藤陸は,どちらかと言うと平凡な人間である.学力も普通の高校2年生程度であり運動神経も特別に良いわけではない.友達はゼロではないが,そこまで多くない,そんな普通の人物.少なくとも,春野 桜,夏目 美波,秋月 紅葉,冬村 雪の学園の4大美女と呼ばれている人から「私と付き合ってください.……返事はすぐにじゃなくて良いから」と同じ日に言われるほどのスペックは持っていない.


「……意味が分からない.もしかしてあのメールはマジなのか.」

告白ラッシュを受けた佐藤は,一人教室で座り込んでいた.一人の教室では時計の秒針の音だけが響いていた.佐藤は,ふと今朝届いた,消せない迷惑メールを思い出した.


『私は未来から来ました.あまり多くのことは言えないですが,まず,「今日告白してくる運命の相手と結ばれないと世界が滅ぶ」この事は忘れないでください.次にもしかしたら何かの妨害があるかも知れないですが,間違えずに運命の相手を探してください』

理解できないメッセージを朝から送られてきて速攻ゴミ箱に叩き込もうとしたが,それが出来なかった,そのメールを見てため息をついた.


(未来人な訳がないし,証拠とないし.)

しばらくの思考の後にそんな結論を出して

「……いや,ドッキリでしょ.」

一人で苦笑いを浮かべた.


一人だった教室にもう一つの声が響いた.

「いや,事実だよ.ドッキリの告白じゃないと思うよ.」

声の主はすぐに佐藤には分かった,クラスメイトの声が分かる程度には佐藤には社交性があった.それに声の主はある意味で有名な人物だった.


「げっ,週刊誌部」

声の主は高橋 希美,オブラートに包めば中性的な体系をしている黒髪のショートカットの佐藤のクラスメイト.緩い雰囲気を纏いながら,学校のゴシップを調べて回る,通称週刊誌部の部員だった.


「新聞部です.見てましたよ,4大美女に告白されてるとこ.私の調べによると,少なくともあの4人が結託してるとかではないですよ.」


「そうなんですか.……見てた」

佐藤は声を荒げた.その様子を見て,高橋は,ゆっくりと4枚の写真を佐藤に見せた.それは隠し撮りで撮影された写真であった.


「マスゴミ」


「……天然タラシ野郎には言われたくないんですけど」


「違いますよ,濡れ衣です.そもそも別に4人とあまり接点はないんですよ.」


「何を言ってるんですか?じゃあ,何で告白されてるんですか?」

高橋は,そう言って首を傾げた.


「だからそれが分からないからドッキリって,思っていて……」


「……分かりました,私がこの奇妙な状況を推理します.面白そうですし」


「大丈夫です.」

佐藤は,ろくでもない相手からコンマの世界で逃げようとしたが遅かった.


「あることないことを校内新聞にしますよ.良いんですか?佐藤君」

高橋は,そう言いながら写真を見せてニヤッと笑った.


「……分かりました,今日の告白の話を聞くぐらいで手を打ってください.」

(まあ,確かに意味が分からないし,未来人の件を抜いても.人に聞けば分かることもあるかもしれないし)佐藤は,心の中でそう言って自分に言い聞かせていた.


「では,まずは,春野さんから行きましょうか.」

最悪のインタビューが始まった.

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