第18話
「ええと、すみません。医者の方に面会をお願いしたいのですが」
「診察の予約はされていますか?」
「いえ、患者じゃなく、遠方から訪ねてきた知り合いのものなんですが」
「アポは取られてます?」
「いえ、突然ですまないとは思うんですがね」
「一応問い合わせてはみますが、すぐに会えるとは限りませんよ」
「ええ、待ちますよ。それでね、その人っていうのは…ユリという名前で、職員番号がGの一八九四六四九の…」
交渉するテッドの後ろで小さくなっていたタクの目の端に、何か銀色のものが映った気がした。
振り返る。
「ユリ!!」
思わず叫んでいた。小柄な白衣の後ろ姿。その上にまとめ上げられている髪の毛は銀色だった。
「え?」
忙しげに通り過ぎていた女医の足が止まり、振り返る。
「誰…?」
「俺だよ、タクだよ!ナトの里の…」
「え、もしかして、あのタク?」
藍色の瞳が驚きに見開かれる。
「やっぱりユリなんだな?ああ、よかった、ほんとに会えるなんて」
「なんでこんなとこに…っていうか、生きてたのね?タクも、タツ兄も…」
涙にうるんだユリが、走り寄って来てタクに抱きついた。
「ユリ…!よかった、無事に生きていて…」
タクとタツの目も潤んでいた。しかし、そんな感動の再会に水を差す声がする。
「ユリ、何をやっているんだ。早く来なさい」
年輩の白衣の男性が、タツらを胡散臭そうに見ながらユリを呼んでいた。
「あ、はい」
涙を拭いてユリが慌てて顔をあげる。
「ごめんなさい、まだ仕事中なの。夕方には上がれるから、一緒に夕食を食べましょう」
「あ、ああ」
ぽかんとしているタクとタツに、ユリは手早く待ち合わせの時間と場所を伝えて去って行った。
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