第19話
「なんか香水つけてる?」
「香水? 何もつけてないよ。香水嫌いだもん」
「なぁ、これも条件に含まれるの?」
「モフモフ癒しは家事に含まれます」
癒しも家事って無茶なこと言ってないか? 体力的にはただ実が抱きついているだけで問題ない。
ただ、この甘い香りだ。今まで会った女からは嗅いだことのない匂い。不快ではないけど――
俺は実をそのままに人の姿に戻る。クラクラする感覚がどうしても危険だと本能が言うのだから仕方ない。
「ちょっと着替えとか取りに行ってくる」
実は人の姿になると興味を無くしたように体を引いて首を傾げる。
「家もないのにどこに着替えを置いてるの?」
「コインロッカー」
「あぁ、それで行くの?」
スウェット姿の俺を指さして言う。洗濯機に入れられていた服に着替えて行くつもりだったが、実はリビングから「ちょっと待ってて」と寝室に入っていき、大きなボストンバックを引きずるように持ってリビングに戻ってきた。
「これ、好きなの着ていいよ。サイズも大丈夫そうでしょ?」
「これって……」
「元彼のだよ。ゴミだから」
予想はしていた。元彼のは良いとしても、もう少し言い方を考えて欲しい。
――俺にゴミを着ろってのか?
手を付けない俺の様子に、やっと自分の発言が悪かったことに気付いたらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます