第17話
「家賃無しでいいから家事全般を私の代わりやってくれること。もう一つは私が仕事から帰ってきたら、お帰りってあのモフモフの姿で必ず出迎えてくれること。ほかは自由。何かあった時に決めてく感じでどう?」
あまりに簡単な条件に心が揺れる。家事をこなして出迎える。獣人や狼の姿になっても気にしなくていい。
毎日、宿と食事の心配なし。ちょっと変な女だけど危険はなさそう。
でも、俺にだってプライドってもんがある。簡単に手懐けられるなんて思われたら犬とかわらない。
「冬が終わるまででもどうかな?」
俺の葛藤を知ってか知らずか、実は魅惑的な提案をする。そんなに住んで欲しそうに頼まれたら仕方ないよな。
首輪をつけられるわけじゃなし、嫌になれば出て行けばいいんだ。
俺は椅子の背に手を掛け珈琲をすすり、あくまで仕方なさそうに、ぶっきらぼうに答える。
「冬が終わるまでなら別にいいけど……」
「やった! じゃあ、よろしく銀!」
そんなに俺と住みたかったのか? 変だけど喜んでいる姿は意外と可愛いし、やっぱり人間の女なんてちょろい。
俺は「よろしく」と実に挨拶して同居することを決めた。
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