第16話

「名前が無いって言ったでしょう? 考えるのに和風と洋風で迷っちゃって。だからもとの種類を聞いてからと思ったんだけど……どっちがいい?」



――そこかよ!?


 なんとも言えない気持ちにトーストを食べながら「なんでもいい」とぶっきらぼうに答えた。



「それなら、銀[ギン]てどう? 毛の色が灰色って言うよりはキラキラ光って銀色っぽいし。嫌だったらまだ候補があるよ。ポチ、ハチ……」


「銀でいい!」



 いくらなんでもいいと言っても、犬みたいな名前は俺だって嫌だ。


 それにまだ、俺はここに住むなんて一言も言ってないことを思い出す。


 住む気はないとはっきりと言おうとすると、実は食べ終わった食器を流しに置いて椅子に座りなおした。


 真面目な顔をして咳払いを一つして話し出す。



「それで、ここに住む条件のことだけど」



 先に切り出されてしまった。まぁでも、この変わった実が出す条件くらいは聞いてみたい気がして頷く。

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