第15話
シャワーを浴びて出ると、いつの間にか脱衣所にスウェットの上下が置かれていた。広げてみるとメンズサイズのもの。
「彼氏……いるのか?」
俺が着るように置いてくれたのだろうから遠慮なく袖を通し、濡れた髪のままリビングに戻った。
ダイニングテーブルにはサラダと淹れ直した珈琲が用意され、タイミングよく食パンが焼ける音がする。
「サイズ大丈夫だった? 座って」
言われるがまま座ると、買ってきたビーフジャーキーと皿に乗ったトーストが置かれる。
実が座って落ち着いたのを見てお礼を言う。
「着替えありがとう」
「元彼が置いてったやつだから気にしないで。朝ごはん食べよ? いただきます」
さらっと元彼のやつって言うけど、着替えが残ってるのって別れて間もないのだろうか。
感慨深げに自分の着たスウェットを見ていると実がテーブルの下から重そうな本をテーブルの上に置いて開く。
口に入れたトーストを珈琲で流し込んで実は開いたページを指さす。
「どの種類? 海外から来たの?」
「どれも違う……」
分厚い動物図鑑には、色々な狼の写真が並んでいる。自分でもこの写真の狼たちを見て、どれが自分と同じなのか分からない。
――彼らは同族であって同族ではない。俺はただの狼じゃなくて狼男だから。
少しだけ感傷的になっていた俺を見て実が首を傾げて困ったような顔をする。
写真の下には絶滅種と書いてあるものもある。ちょっと失礼だったとか、俺が気にしているんじゃないかって心配しているのだろう。
気にしないでいいと口を開きかけたが、実が先に口を開く。
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