第18話

大きな鏡がついたドレッサーの前で、いつもと少し違う自分に驚いていると両肩を掴まれて椅子に座らされた。





「少しだけメイクしようか? もっと可愛くなるよ」



「レイコ! あの、どうして?」





 可愛くしてもらうのは凄く嬉しいけど、理由が分からない。



 鏡越しに見えるレイコが少し驚いた顔をした後、優しく笑った。





「なにか届けに行くんでしょ? 好きな人に会うときは、少しでも自分を可愛くみせたいじゃない」





 さっき私が服装のことを聞いたから―― 

 本当にレイコって優しいお姉さんみたい。





「ありがとう」



「こんなことだったら、いつでも協力するわよ」





 なんだかレイコはそう言って楽しそうに私にメイクをしていく。



 いつも自分では日焼け止めに軽くファンデーションをするぐらいで、ほとんどメイクなんてしない。



 緊張しながら出来上がりを待った。





「出来たわよ。我ながら完璧」





 レイコが私の前から退くと、鏡には少し目が大きくなって唇が桜色に艶めいている自分が映っていた。



 いつもとなんか違うよね? 髪もふわっとしてるし、すごいなあ。





「素が可愛いから、マスカラとリップグロスだけで十分」



「すごいね! 自分で言うのも、あれだけど可愛くなったよね?」





 鏡の前でクルクル回って自分の姿に感動していると、レイコが笑った。





「今日は、早めに切り上げて喫茶店行ったら?」





 私は頷いてレイコと一緒に蔵のアトリエに戻った。

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