第17話
蔵から庭を少し歩くとある大きな洋館がレイコの自宅。
大きな扉を開けて入ると広い大理石のロビー。お手伝いさんが出迎えてくれる。
「お帰りなさい。レイコさん」
「ただいま。すぐ、蔵に戻るからお茶はいいわ」
軽く会釈してレイコの後についていく。
二階にあがり長い廊下を進むと、壁にはレイコの描いた静物画が飾ってある。
花瓶に入った花の絵。とても瑞々しく凛とした花。レイコそのものみたい。
絵に見とれている私を先に歩いているレイコが止まって呼んだ。
「なにしてるの? 早く」
「うん!」
いくつかの扉を通り過ぎて、やっとレイコの部屋に到着。
蔵のアトリエには何度も出入りしているが、屋敷の方に来るのはこれで三度目。
迷子になりそう。
レイコは部屋に入るとちょっと待っていてと、奥にあるウォークインクローゼットのドアを開けて入っていった。
ロココ調に統一された部屋にあるクッションがたくさん並んでいるソファーに座って待った。
「あった! これこれ絶対、似合うと思うわ」
服を何枚か持ってウォークインクローゼットからレイコが出てきた。
ベッドの上にその服を広げて置くと私を呼んだ。
「多分サイズも大丈夫だと思うんだけど」
広げられた服は、どれもフリルやリボンが控えめについた上品で可愛らしいものだった。
プリントTシャツなんかが多い私の服とは大違い。
服だけで女の子だ。
レイコは持ってきた服私に取っ替え引っ替えあてがう。
やっと一枚の服で手が止まった。
「これがいいわ。着てみて」
淡い緑の前がボタンになっているノースリーブ。袖口にはフリルが付いている。
言われるがまま、レイコから服を受け取って部屋の隅で着替えた。
「着れたけど……」
振り返って見ればレイコが満足そうに笑って頷いてくれたけど、レイコの意図が掴めずに困惑してしまう。
「似合ってるわよ。今度はこっち来て座って」
フリルがあるような服は着たことなかったけど、私も女の子だったんだ――
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