第16話

「レイコは告白しないの?」



「しないわよ! だって悔しいじゃない。こんなに美人が尽くしてアピールしてるのに眼中にもないなんて、ムカツクじゃない!」





 それは好きなのかな?

 なんだか、女の意地みたいな気がすけど――



 困ったように私が笑うと、レイコは肩を落として溜息をついた。





「本当はちょっと怖いの。断られたら今みたいにはいかないと思うから……もう少しあいつが気付くまで頑張るわ」





 ナオヤとレイコ、どっちが変わってしまうんだろう?

 二人共変わって私も変わるのだろうか?




 人が変わるほどに恋って大きなものなんだ――




 それはやっぱり凄く怖いことで、恋愛初心者には想像もつかない。



 レイコになんて言えば良いのか困っていると、見かねたレイコが笑った。





「ダ・ヴィンチもなんか言ってたわよね “苦労せざる者は幸運に値せず” だっけ? 恋愛も同じようなもんでしょ? 忘れるのなんて最後よ。まずは行動」





 そうだよね行動しなかったら、何も起きないもの。

レイコを見習って――




 まずは、借りたタオルを返さないと。




 マスターさんがゲイって言うのは、あくまでも噂だ。どんな人か全然分からないもの。




「私もマスターさんと仲良くなりたい」



「フフッそれなら、私の部屋行きましょ」




 レイコに手を引かれて階段を下りると蔵の扉が開いてた。 外でナオヤがストレッチしているのが見える。




「なんだ?もういいのか?」



「ナオヤありがとう! でもね、まだ忘れないよ」




 ナオヤはあっそうと、嫌そうな顔をしていたけど私は笑顔を見せた。



 レイコと目が合って笑いながら蔵をあとにした。

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