第15話
「はい、これ」
手に持った二つの缶ジュースの一つを私に差し出した。
お礼を言って受け取るとレイコは私の隣に座って缶ジュースのプルタブを開けた。
「大丈夫? 忘れろって言われても、眠ったくらいで忘れられないわよね。あんなに優しい色使いなのに、乙女心の微妙な色はわからないのね」
レイコの目線の先には、イーゼルに立てかけてあるナオヤの油絵がある。
ナオヤは風景画を得意としている。モネを思わせるような優しい色彩で見ていると、日光浴しているような気分になる。
私もナオヤの作品は大好き。たしかに、描いている本人からは想像出来ないよね。
さっきも燃えるような赤って言っていたし、なんだか可笑しくなって自然と笑えた。
「ありがとうレイコ。ナオヤも気を使ってくれたんだよね?」
「そうかも。あいつなりの優しさだったのかしら? 人を好きになっちゃうのってやっぱり理屈じゃないのよね。私も、あんな訳のわかんない奴、好きになっちゃうし」
最後だけ小声で私に話すと優しく笑った。綺麗なロングストレートの髪にしっかりとした凹凸のある体。
身長も一六〇センチはあってモデルみたい。少し猫を思わせるパッチリ二重の目がとってもクール。
同性の私だって思わずレイコに見とれる。
それに、ボケっとしている私とも仲良くしてくれて面倒見の良い、姉みたいな優しい女の子。
けして悪い人間じゃないけど、ナオヤにレイコ勿体ない気がしないでもない――
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