第14話

さっきまでは黄色。今は灰色とか黒。

 マスターさんは白、赤――桃色か桜色。





「恋の色って何色?」





 ぼそりと呟くと、思いのほか近くから答えが返ってきた。





「燃えるような赤だな」



「そう? 私ならピンクね」



「ピンク……」





 いつの間にか後ろに立っていた二人の返答に吃驚して振り返る。レイコの答えに顔が熱くなっていく。





「顔赤いよ? 大丈夫?」



「大丈夫」





 全然、大丈夫じゃない。



 望みがほぼ無いと分かったのと同じにマスターさんに恋をしている自分を知ったんだから。



 悲しむべきか喜ぶべきか――なんだか複雑だよね。

 一人で百面相をしていると、私の前にナオヤが膝をついた。





「具合が悪いなら上のソファー貸してやるから寝てろ」





 そう言って私を肩に担いだ。





「ちょっ! 大丈夫だよ! おろしてよ」





 ナオヤの背中を叩いて騒ぐが、そのまま階段を上がっていく。



 見た目は一八〇センチの細身でひょろっとした感じなのに、意外と力がある。



 その様子をレイコが顔を赤らめて見ている。



 ナオヤは見た目とのギャップが素敵なのと言っていたレイコ。今のこれが素敵なのかな? 

 担がれているこっちは決して気持ちの良いものじゃない。





「寝て起きれば忘れるだろ? 忘れちまえ」





 ソファーに荷物のように下ろされ、私の頭をグシャグシャと撫でて階段を下りて行った。



 気を使ってるのかな?



 ナオヤと入れ違いにレイコが中二階へやって来た。

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