虚像

第13話

一瞬なにを言ったのかわからず、聞き返すと今度はレイコが説明をしてくれた。





「大学内では有名よ。どんな美人な女性が口説いても落ちない。そのうち、彼はゲイなんじゃないかって噂になったのよ」



「でもなんで、ダ・ヴィンチの愛人なんて呼ばれるの?」



「そりゃ、喫茶店の名前とレオナルド・ダ・ヴィンチが同性愛だったてやつを掛けてるんだろうな。まっ、恋人じゃなく愛人ってのは皮肉だろうけど」





 興味のないことには、本当に頓着がない。



 レオナルド・ダ・ヴィンチのことは知っていても、自分の周りで囁かれる噂などまったく知らなかった。



 作品を描いていると特に周りのことが分からなくなってしまう。そのせいで、今まで友達と呼べる人がいなかったくらい。



 それより、マスターさんは本当に同性愛者なんだろうか?

 偏見とかはないけど女性に興味がないんじゃ――



 なんだか気分が沈む。





「あれだ、好きになる前でよかったじゃねえか!」



「うん……」





 返事をして、イーゼルに真っ白なキャンバスが置かれたいつもの私の定位置に座った。



 頭がぼんやりする。好きになる前?

 分からないよ――

 床に置いてある道具箱から絵の具を取り出して眺める。

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