第16話

祥也からの告白を受けてから、結希は改めて“祥也”と言う存在の大きさを感じるようになった。

けれど、それと同じ、それよりも大きな存在が幸である事も結希の中で膨らんで行く。

それから3日後、結希は答えを伝えようと、近くの公園に祥也を呼び出した。


祥也は告白前とちっとも変わらず「よっ!」と結希に手を上げて歩いて来る。

「ごめんね。返事、遅くなっちゃって。」

祥也は近くのベンチに座り、「ううん。」と首を横に振る。

その横に結希も座ると目を閉じ、大きく息を吸い込んだ。

そんな結希の姿に、祥也も心を決める。


少しの沈黙の後、結希は気持ちを一つ一つ伝えて行った。


「あれから祥也の事を考えたの。今までにないくらい祥也の事を考えてた。それと同じくらい幸の事も考えちゃうの。知らないうちに幸の事を。私、祥也とはこれからもずっと仲良くして行きたい。祥也に側にいて欲しいって思ってる。でもそれは、彼氏としてじゃなくて、大切な…1番大切な友達として横にいて欲しいの。すごく勝手だけど…。」

結希はそこまで言うと、立ち上がり、祥也に背を向け、続けた。


「傷付くかも知れないって分かってても…たとえボロボロになって、これ以上ないってくらい落ちたとしても…このまま消したくなくて。納得の行く答えが出るまで、この気持ちのまま進みたいの…。」

少し震えている結希の背中をそっと抱きしめ、「結希なら大丈夫。もし駄目になったとしても…ボロゾロになってこれ以上にないってくらい落ちたとしても…その時は俺が支えてやる。その為に俺…この気持ちのまま、結希の側にいるから。結希…大丈夫だから。」と祥也は優しく結希の答えを受け入れた。

「祥也…。」

結希は両手で顔を覆い泣いた。


『幸の事が好き』

たったこの一言に涙が止まらない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る