*動き出す気持ち*
第14話
あの収録の日以来、結希は祥也と過ごす時間を意識的に多く持つようにした。
この日も結希は祥也とデパートへショッピングに来ていた。
突然祥也が「待ってて。」と言い、CDショップへと入って行く。
待つ事数分後、丸めてあるポスターを手に、祥也が笑顔で戻って来た。
そして、そのポスターをそのまま「あげる。」と結希に渡したのだ。
「何?」と目を丸くする結希に「見てみろよ。」と祥也はポスターを見るよう促(うなが)す。
「うん。」
頷き、ゆっくりポスターを開いて見た。
そのポスターは、デビューシングルCDの広告用ポスターだった。
「あっ……。」と結希は幸のポスターを手に祥也を上目に見る。
「店に貼る為のポスターだから、手に入りにくいし、ファンなら欲しい1枚だと思ってさ。お店の人に頼んで、やっともらえる事になったんだ。次のポスターも欲しいだろ?また何度も頼んで手に入れてやるからな。」
祥也は幸のポスターを眺め、少し取れたように話した。
結希はポスターを丸めると、「ありがと。でも、もういいの。」と笑いながら首を横に振る。
「えっ?何で?もういいって…結希、収録の日、本当は何かあったんじゃない?」
祥也の言葉にドキっとした。
あの日の幸の目を思い出し、結希は思わずポスターを強く握り締める。
「何でもないってば。ポスター、そんなに貼る場所もないし…。」と結希は祥也に笑って見せ、「ねぇ、他の所に行こう。」と別の売場へ行こうとした。
その手を掴み、「待てって!」と祥也が結希を止める。
「収録は楽しかったし、何も無かったよ。もうこの話はやめよう。」
祥也はそう言う結希の手を掴んだまま歩き出し、嫌がる結希を引き、デパートを出た。
「やめて!放してよ!何なの?!いきなり。」
結希は祥也の手を振り払い、「どうしちゃったの?」と掴まれていた手を摩る。
「どうかしてるのはお前の方だろ!」
「えっ?」
祥也は結希の気持ちの異変に気付いた。
「どうもしてないよ!。どうかしてるのは祥也の方なんじゃない?」
「あの日、あの収録の日、本当は何かあったんじゃないの?」
祥也に言われ、思わず涙が込み上げて来てしまう。
どんなに笑ってみせても、祥也には見透かされてしまう。
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