*悲しい再会*

第12話

それからと言うもの、笑顔のまま観覧日が来るのを指折り数え、やっと幸に会えると言う日の朝を迎え、結希は元気良く家を出た。

電車とバスでスタジオまで行き、ハガキを受け付けで提出し、今活躍している歌手がバタザタとリハーサルするスタジオに、結希も入って行く。


そして、スタジオの隅でギターのチューニングを合わせている幸の姿にを見つけた。

その姿をただ見つめていた。


「それでは、収録始めます!」とスタッフの動きも慌ただしくなり、司会者もスタジオに入ると、カメラのスイッチが押され、遂に“MusicTops”の収録が始まった。


「スタート。」

「OKです。」

その声の中で、司会者が番組を進行し、まとめて行き、次々と歌手やバンドが生で演奏し、歌って行く。


「それではラスト、屋月幸さん入ります。」と言うスタッフの声に、一際大きく黄色い声援が起こり、結希の胸の鼓動も高まった。


そして今、結希の目の前に待ち焦がれていた幸が立ち、ファンに笑い掛けている。


司会者は幸にマイクを渡し、「すごい人気ですね。」と結希たちファンを見た。

「そうですね。本当に感謝しています。」

幸の一言一言にファンは「キャー」と叫び、幸に向かって手を振っている。

その中で結希はただただじっと幸だけを見つめていた。


「これから歌う曲は来月リリースされる新曲ですよね?」

「そうです。ファンの皆さまのお陰で、こんなに早く2枚目のシングルを出させて頂く事になり、ファンの皆さまへの気持ちを歌にしました。」

「それでは歌って頂きましょう。屋月幸さんで“夜空”です。」

「はい!OKです。屋月さん、スタンバイ入って下さい。」


収録が進んでいく中、度々、幸はファンたちに笑顔を見せたり、手を振り返したりしている。

でも、結希の姿に気付いているのかいないのか、幸は結希に対して表情一つ変えない。

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