*祥也の当選ハガキ*

第10話

幸のデビューが決まったオーディションライブから約2ヶ月後。


遂に幸のCDの発売日がやって来た。


発売日のこの日。


放課後。

結希は祥也と一緒に、CDショップへ向かった。


歌手になった“屋月幸”のデビューシングルCDを探す。


「あった!」

幸のCDを手に祥也の元へ行くと、「ハイ!」と1枚を祥也に渡し、結希は「スゴーイ!」と嬉しそうに、CDを無邪気に見つめる。


幸との話を聞いていた祥也はCDを手に、「コイツが結希を元気にしてくれたって人か?」と聞く。


「そう。あの日、幸に出逢ってなかったら、きっと死んじゃってた。」

結希はそう言うと「買おう。」と嬉しそうに笑顔を見せ、レジへと急ぐ。


CDを買ってすぐに結希は袋を開け、持ち歩いているCDプレーヤーで、幸のCDを再生し、聴き始めた。


「凄い!名刺の特典付きだよ!」

結希はCDの特典として封入されていた幸の名刺を見た。


そして、急にガッカリした表情を祥也に見せる。


「何?彼女でもいた?」と言う祥也に、結希はブンブンと首を振り、「ここ見て。」と名刺の一部分を指差し、祥也に名刺を渡す。


結希が指差した部分に、【好物=リンゴ】と書かれていた。


「結希、リンゴアレルギーだもんな。残念。」


祥也の言う通り、結希はリンゴアレルギーで、リンゴを食べると呼吸困難になってしまい、薬を飲まなければならないくらいの中毒症状を起こしてしまう。


命を落とす危険性もある為、結希はその中毒症状を抑える抗生物質をロケットの中に入れ、ネックレスにし常に首から下げ持ち、行動をしている。


「好物がまさかの毒リンゴだなんてね。」と笑いつつも、結希はショックを受けた。


幸の好きな物を自分は食べられないのだから。

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