第103話 35日目 12月25日(水)3
(緋音サイド)
「緋音さん、大丈夫ですか?」
「あ、うん。悪阻ってこんなにつらいんだね」
「人にもよるですよ。軽い人ももっと酷い人もいるようで」
「そっか」
私は、運ばれてきたみそ汁の匂いでちょっとダウンしている。
もう少ししたら落ち着きそうな気がするが、なかなか喉を通らない。
今は、オレンジジュースを飲むだけにしている。
お母さんとお義母さんは、芽愛ちゃんに離乳食を交互に与えている。
「涼香ちゃんは、食べれたらしっかり食べてね」
「あ、はい。あはは、お義母さんたちが見ていてくれているからよく考えたら食べれますね」
そう言いながら、涼香ちゃんは箸を動かした。
そうよね、育児をしていたら自分の事は二の次になるのよね。
これから、頑張らないと。
「あ、そう言えば安定期前の長距離移動ってどうしたらいいのか?」
「新幹線とか船はおすすめできないですよ」
「やっぱり、そうよね」
「車で行ってこまめに休憩を挟むのがいいと思います」
「なるほど、その方がいいんだね」
「どこか遠出に?」
来月の移動の事でちょうど聞いておきたかった。
折角、慎くんとの子を授かったのに危険なことはしたくない。
「うん、慎くんの元お嫁さんとの裁判があって」
「この間の火事の…」
「うん」
場の空気がどんよりする。
まあ、痛ましい事件だから仕方がない。
それにしても、彼女はやってくるのだろうか。
私の予想では、彼女は来ない。
それならそれでこちらとしては都合がいい。
全ての罪を否定することを拒むのだから。
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