第16話

「お菓子作りしてなかったの?」


俺は、緋音から少し距離を取って腰を下ろした。

そして、ティーストレーナーをカップに置いて紅茶を注ぐ。

ダージリン。

そのセカンドフラッシュが置いてあったからそれを使った。

カップの中に注がれた紅茶は、やや濃いめのオレンジ色をしている。

立ち込める香りは上品で爽やかだった。

ストレーナーを外して、ソーサーに置く。


「じゃあ、紅茶と合わせて召し上がれ」

「はーい、いただきます」


紅茶を口に含む。

マスカットのような爽やかな香りが口の中いっぱいに広がり、スーッと鼻腔から抜けていく。

心地がいい。

流石、ダージリンの中でも最高級品だ。

ダージリンは、紅茶のシャンパンとも言われている。

世界三大紅茶の1つに数えられている。

インドのダージリン地方東ヒマラヤ山脈に位置し、茶樹は標高2000mの高地から斜面に植えられている。

日中の直射日光と夜間の低温による寒暖差で発生する霧が、独特な味や香りを作り出しているそうだ。

3月から4月に収穫される物を、ファーストフラッシュ(一番摘み)。

5月から6月に収穫された物を、セカンドフラッシュ(二番摘み)。

10月から11月に収穫された物を、オータムナル(秋摘む)と言う。

それぞれに、特徴が異なる。

ファーストフラッシュなら淡いオレンジ色になるし、オータムナルは渋みが増しやや赤みが掛かった濃い色合いになる。

オータムナルは、ミルクティーと相性がいいらしい。


「紅茶美味しい…慎くんが淹れてくれる紅茶は絶品だね。

私が淹れたら此処までにならないよ」

「え?しっかり手順通りに淹れたら美味しくなるよ」

「うーん、私には無理かな…あはは」


緋音は、苦笑いをした。

彼女は、そんなに不器用だったかなと俺は首を傾げた。

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