21 披露宴
そんなこんなで婚姻の儀が終わると今度は披露宴の時間。これも身内だけだから気を遣わなくて楽だよね。公爵様は契約結婚のことをシエル様とリジー以外に知られたくないのか分からないけど、表面上は親し気なまさに新婚の夫婦を演じるため、甘ったる~い笑顔をこちらに向けてきた。
だけど残念、それが作り物だと分かっているから何とも思わない。参列していた皆様が疲れているだろうと気を使ってくださって、最低限挨拶回りをしたら解散しようと言う話になった。
ものすごく、助かりますね!そんなことを思っているとお姉様が会場から出て行こうとしているのが目に入った。
「公爵様、わたしは少し抜けますからこのまま挨拶回りを続けていてください」
「君の姉か。ふっ、晴れ姿でも見せつける気か?」
ふっ、じゃないですよ。何を笑っているのですか。一応断りを入れておこうと思ったのに失礼ですね!
「冗談だから睨むな。早く行って来ると良い」
「はい」
少し急いでお姉様の方に向かうと出て行こうとする途中でこちらに気付いたようで、わざわざ振り向いて立ち止まってくれた。
「お姉様、来てくださったのですね」
「……招待されたのだから仕方ないでしょう。公爵家のご夫人になるあなたの誘いをそう易々と断れるものですか」
「ご迷惑でしたか?」
「そんなこと言っていないでしょう。でもお父様たちを誤魔化してここに来るのは大変だったのだから。それで、私に何の用?」
「近いうちに招待状を出しますから、公爵家でお茶会でもしません?お話したいことがあるのですよ」
すると呆れたように大きなため息を吐かれる。
うん、今のお姉様がわたしに何を言いたいのかはよく分かる。
「私、お父様たちに行き先を誤魔化して出掛けるのは大変だったって、今言ったばかりなのだけど?」
「まあまあ、良いじゃないですか。お姉様とはお話したいことがたくさん、たーくさんあるので」
本当にたくさん。個人的な話もだし、これからのフランクスについても。現在のフランクス伯爵家の当主はお父様だから忘れているかもしれないけど、正式な跡取りはこのわたし。それは結婚したくらいで変わるものではない。領地のことも家のことも、たっぷり話をしないとね。
お父様やお継母様は話が通じない、率直に言うなら馬鹿だからね。その点お姉様は容姿だけじゃなくて、教養もある。こういった話をするにはお姉様が最適だと言うこと、それくらいはわたしでもちゃんと理解しています。
「……はぁ。分かったわよ。でも一度きりにしなさいよ」
「ありがとうございます」
「それでは私は帰るわ。ではね」
「あ……」
「前にも言ったけれど、せいぜい公爵家に捨てられないように頑張りなさいよ。せっかく……」
───可愛いのだから、綺麗にしていないと勿体ないでしょう。
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