20 婚姻の儀
表向きは筆頭公爵家であるフェルリア公爵家当主の婚姻の儀となると、特別仕様らしく王宮内にある神殿で式を挙げることになっているそう。実際にはロード同士の結婚だからであるが、こういう時に建前でも公爵とは便利な肩書だ。前代未聞のロード同士、それも現当主と一週間後には当主になる二人。
内情を知る者は卒倒しそうになるほどの権力だ。
「始まるな」
「契約は絶対に守ってくださいよ」
「そちらこそ」
およそこれから結婚する男女とは思えない会話だけど、お互いに契約結婚のための式で緊張するようなタイプではないのでこんなものでしょう。
わたしは公爵家が用意してくださった最高級のシルクを惜しげもなく使用したとーっても艶々なシルクのウエディングドレスを身に纏い、これまたキラッキラしている公爵様の隣に並び立った。どう考えてもわたしが霞んでいるんだよね、二重の意味で。
ドレスに着られていると思うし、公爵様には釣り合っていない。これはもう公爵様とウエディングドレスが主役かもしれないね。わたしはただの付き添い人?
それでもリジーは元通りになった髪を丁寧に結い、またまた最高級品であろうアクセサリーを付けて綺麗だと言ってくれた。前よりは、と言う意味だろうけどリジーはわたしに嘘を吐かないしお世辞も言わないから素直に嬉しかった。
ついに式が始まって中に入る。わぁお、意外と人数多くないですか?今この場にいるのは全員、わたしと公爵様がロードだと知っている。立会人もただの神官ではなくまさかの教皇。皇族の皆様に教皇様、リジーとシエル様とお姉様。…………ん?おねえさま?お姉様!?
「え、え、え……?」
「どうした?」
「いえ、あの、お姉様が……」
「君が招待したのだろう?」
「そ、そうですけど、まさか本当に来てくださるとは……思っていなかったので……」
幸せそうな(作り)笑顔で祭壇まで歩きながらひそひそと周囲の方々にバレないように話していると、ちょうど通路側に座っていらした皇女殿下に苦笑される。何でもないふりをしてそのまま歩くと、小さく噴き出す声が後ろから聞こえた。これは後で揶揄われるやつだわ。皇女殿下……えっと、ヴィオレッタ様はわたしの三歳年上で本当の姉妹のように仲良くして頂いています。
綺麗で可愛くて、でも少しお茶目なところがある素敵な方なんですよ。
身内だけの式だからか嫌な視線は感じない。教皇様の誓いの言葉に嘘八百で宣誓し、証明書にサインした。これで正式に夫婦になってしまった。躊躇うことなくサインする公爵様もお綺麗だったけど、やっぱり嫌味な笑顔でペンを渡してくるので好きになれない。
もっと普通の笑顔ならちょっとはときめくかもしれないのにね。そんなこと求めていないのは百も承知ですけど。
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