第5話 ノーベル賞受賞者の兄よ、君はパワハラ魔の【走り】か?
整形外科医であった息子正五郎の、パワハラを原因とする死。この関連で、筆者の受けた小6時のパワハラに気付き、遅ればせながら教育委員会に対し訴訟を起こした(被告は堺市市長であるが)。この裁判に対する判決は令和6年10月29日に下る予定で、3人の被告側弁護士の自信に満ちた表情から推測しても、原告である私の敗訴判決が順当というのが、法曹界の圧倒的多数意見であると思われる。ただ、私の信頼するYR弁護士がメールをくれて、「女性の裁判官ばかりといえば第2民事部ですね。少し期待が持てそうですね」との、嬉しい内容が記載されていた。
受訴してくれた第2民事部というのは庶民には希望のコート(法廷)のようで、ここで敗訴判決が出れば、まず上(控訴審)へ行っても、一審が覆ることはないのであろう。いずれにしても原告たる私は今回、どのような判決が出ようとも受け入れるつもりで、上訴する意思は全く持っていない。
第2民事部で下される判決まで少し間があり、また息子正五郎の裁判(行政訴訟および民事訴訟)は準備にもかなりの時間がかかることから、教育委員会への裁判とパラレルというか並行して、私への思い当たるパワハラ事件を記憶から呼び戻してみると、小見出しにある人物の嫌がらせと言ってもよい、私に対する嫌悪に満ちた行いが、小6時のパワハラと桁違いのパワーハラスメントであったことに思い至る。
私が大阪にある旧帝大の法学部大学院受験の折に、司法試験委員もされていた憲法のKT教授の示唆により判明した事件で、今思うと中々シビアなパワハラである。これも50年近く前の事件であるが、堺市教育委員会への裁判が確定した時点で、裁判を起こしてみようと考えている。損害賠償や謝罪を内容とするものではなくて、当時講師をしていたTT君の、今思えば嫌がらせ以外の何ものでもないパワハラ行為により、私の卒業単位が認定されなかった。
TT君の不当というか違法な私への卒業単位認定阻止行為を問題とする点で、大学の専門的判断に深くかかわるが、本件では特に卒業単位認定の手続き的違法が問われる点で、裁判所の判断に馴染み、また法的判断の対象になることが可能と思われる。
さて、問題の人物であるTT君は私が理学部物理学科の学生であった当時の、神戸大学理学部物理学科の講師であった。一歳下の弟が確か41歳だったと思うが、マサチューセッツ工科大学の教授に就くほどの俊英で、兄であるTT君にはそのプレッシャーが影響してか少々というかかなりの奇行が目立つ人物であった。彼のO大学の後輩で、隣室を与えられていた助手のHI氏などは、ぶつぶつ言いながら部屋中を歩き回るTT君が気になって研究が手につかないと苦情を漏らしていたのだった。T女性事務員なども、エレベーター内で独り言をぶつぶつ漏らすTT君が怖くて、エレベーターに一緒に乗れないと公言する程であったのだ。
弟がノーベル医学・生理学賞を受賞して後はよりプレッシャーが増したのか、奇行の類が増したと風の噂で私の耳にも伝わって来たが、私の単位認定の阻止というパワハラ行為を仕掛けてきた時は、まだ弟のノーベル賞受賞は果たされていなかった。
前提が長くなってしまったが、私へのTT君のパワハラ行為を語るについては、これまた少し長い説明をさせて戴く必要がある。私は理学部の物理学科へ自分でも驚くほどの高成績で入学したものの、物理は不向きだと考え、法学部の大学院で法哲学の研究に従事しようと思い、教養から学部へ上がってからは大学院受験のために本格的に法学の勉強に身を入れ出した。
以上の内容を読まれて、読者の皆さんは奇異に思われるかも知れない。物理から法学に興味の対象が移ったのであれば、なぜ、法学部へ転部しなかったのかと。
この点、今はどうなっているかよく分からないのだが、当時の転部(転学部)は入学時の成績が、替わりたい学部のそれを上回っていれば、医学部以外は容易に認められていて、実際、理学部化学科から文学部へ転部した私の友人もいた。また理学部の同窓生で、化学科と生物学科からも一人ずつ、物理学科へ転科もしていた。その内の一人は入学試験受験時、物理学科へ入る自信がなかったので取り敢えず入り易い生物学科へ出願したと私に打ち明けたが、これも学部学科選びというか、是が非でも入りたい学部学科ゲットの、ダブルスタンダード的危険回避テクニックといってよいものだった。
いずれにしても、当時の物理学科の合格最低点は医学部の次に高かったらしいので、法学部への転部は容易に認められるものだったが、私はせっかく入った学部学科なので物理学科を卒業することにし、四回生の前期までに卒業単位を取得した―――つもりであった。ところが、一単位数え間違ってしまっていたのだ。
ここに、私を異常に嫌っていたTT君のパワハラ(当時は表現も一般化されておらず、またその認識もなかったが、いま現在では正に歴としたパワハラ)が入り込む余地が生まれてしまった。私は農学部の講義も受けていて、そこで取得していた単位で卒業不足単位に代替することで永井教官や事務方(教務)との間で話はついていたのに、何故か卒業式直前に覆されてしまった。
この不可解極まりない、私への嫌がらせ以外の何ものでもない逆転劇の首謀者がTT君だった。これを気付かせてくれたのが、翌年、大学院受験に際し、憲法の口述試験の担当教官だったKT教授であったのだ。
「君の担当教官は、TTさんなの?」
当時はまだ教授室にクーラーは入っておらず、口述試験受験に訪れた私に、覚道教授は半袖の白い肌着姿で迎えてくれた。よほど餅が好きなのか、電熱線のコンロに鉄網を載せ、夏だというのにその上で餅を焼いていた。
「いいえ、TT君は単なる講師で、僕の担当教官ではありません。担当教官は永井さんですが」
何とも親しみやすい庶民的な雰囲気に、私も緊張が一気に溶け、笑顔で応じた。
「そしたら、君への(大学院受験に際し添えられる)所見は永井さんに書いて貰った方がいいね」
「エッ!!」
この覚道豊治教授の言葉で、私は前年の土壇場での卒業単位不認定に、おかしな男が関与している可能性があることを知ったのだった。問題は、確かな証拠の存在であるが、この点は容易に目の前に躍り上がってきた。
私は全国の大学への旅行気分も兼ねて、名だたる大学の大学院受験を予定していたので、手元にまだ出していない受験願書と親展との表示付き封書が数通残っていたのだ。これを教官の永井さんのところへ持って行って確認してもらおうと準備していたところ、下宿に遊びに来ていた友人のA君がさっさと開けてしまったのだ。
「エッ! 何じゃこれは!」
私に対する所見欄に並んでいる言葉を読んで、二人とも呆れてしまったのだ。「物理の能力は低く~」等の、何とも悪意に満ちた私への人物評が並んでいるのだ。
「おい、こんな男に、ここまで言われとうないわな」私の実感で、
「ホンマやな、ここまで書くか」A君の共感でもあった。
「しかし何で、永井さんがこんな男にアンタの所見を書かせたんやろ」
A君の疑問で、私の不審の源でもあったが、これは永井さんに翌日問い合わせて不審が判明したのであった。永井さんは九大(九州大学)卒で、九州に実家があるのか、夏の間は九州へ帰省していることが多いらしく、私の大学院受験書面作成時は、神戸にいなかったので、仕方なくTT君に作成を依頼したとのことだった。
「しかし、TT君に私にとっての重要書面を書かせることの問題を、永井さんもよく考えてくれないと」私の指摘に、
「まさか、こんな非常識なことを書くとは思っていませんでしたよ」永井さんの返答だったが、
「僕は、永井さんに電話で内容を確認したじゃないですか」TT君が横合いから異論をさしはさんだ。
「そんな。常識の範囲内のことだと思って、返答したか知りませんが。こんな非常識なことが書かれるとは思いも寄りませんでしたよ」
「永井さん。常識の通じる人間かどうか、よく判断してから行動に移してもらわないと困りますよ」私の抗議に、
「僕は常識がありますよ」TT君が再び横から割り込んで来た。
「アホかね、君は。大学院受験書面こんなことを書いて、何が常識があるんだね!」私は思わず、TT君を怒鳴りつけてしまったのだった。
TT君と永井さんの会話は、同意を得たというTT君の主張と常識の範囲内の会話内容を前提とする永井さんのそれではかみ合うはずがなく、二人は長い間言い争っていた。なお、二人の会話というか、言い争いは同期の佐藤君がドアの傍で聴いていて証言してくれるとのことである。
ところで、私の疑問は、何故TT君が私をここまで嫌うのかである。私が演習室へ持ち込んである英語の学習を兼ねた英字(大学院受験の英語対策)PlayBoy誌のヌード写真を、TT君がこっそりと見ているところを私に何度も目撃されたからであろうか。別に気にすることもないのに、TT君はすぐ机の下に隠すのだったが、何か知られてはいけない秘密を知られたような被害妄想に陥っていたのであろうか。
いずれにしても、近々裁判を起こすことにしているが、ほぼ卒業が確定していたのに、なぜ一単位の不足を執拗に攻撃され、一年を棒に振らされたのか。しかも、私が専門科目に選んだ物性理論の演習単位は、確か五単位か六単位であったと記憶しているが、それを私は演習終了前に放棄していたので、その半分の単位でも卒業単位に回せば卒業は当然可能であった。なのに、なぜ、嫌がらせといってもよい、事務方も意外と思う留年という判断が下されたのか。しかも私の弁明や私への詳しい説明もなしにである。
息子正五郎のパワハラ死という、何ともつらい事実に直面して、パワハラには特に敏感になっていることから、五十年の時を経た今、TT君関与の事件を裁判の俎上に乗せ、合わせて世間の常識的判断に晒し、客観的評価を得てみよう。そう考え、資料棚の奥を掘り起こし、さて、TT君が書いてくれた私の評価書面。一体、何処にあるのか、と探し求めていると、10月29日がやってきてしまった。63年前の堺市教育委員会の行為を訴えた、判決の言い渡し日がやって来たのだ。
このような訳で、TT君の事件や裁判はより詳しい説明が必要なこともあって、本話の続編として後に紙面を割かせてもらうことにし、TT君事件は取り敢えずイントロ(イントロダクション)のような形で、本話を終わらせていただく。それと、判決が出たことで、S市はやめて堺市、それにF小学校も深井小学校の記載を使っていくことにした。また公務員名も、可能な限り実名を使用することにして、私への名誉棄損等の提訴があれば、応訴の準備を始めることにした。
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