第4話

「・・・なんかさ、入るなりパンチが顔めがけて飛んできたんだけど。避けたらいい蹴りが入ってさぁ!」




「兄貴のパンチ避けるなんて凄いっすね。さすが隼人さん。」




・・・蓮って意外と天然だよね。



「ちっ、鈍ってるな。おい、どっか潰す組はないか?」



「奏、組をジム変わりにしないの!」



「大丈夫だよゆいかちゃん。ちょうど吸収予定の組があるから。

奏が暴れてくれれば、交渉しやすくなるしね?」



・・・隼人、そういう問題じゃないの。




「・・・でも、力で支配するのは違うんじゃない?」



「いや、その【力】じゃなくてね?組を支配下におくには、奏が持っているいろんな種類の力を、相手側に示す必要があるんだ。」




「・・・種類があるの?」




私が首を捻ると、奏が口を開く。




「統率力、支配力、そして戦闘力だ。」




「・・・なるほど。」




食後のコーヒーを口に含み、顔を上げた隼人は、極道の顔になっていた。




「つまり、若が暴れることによって、戦闘力と統率力を知らしめ、こちらに下るほど頭の良い組なら、支配力もお見せしようということですゆいか様。」


そうほほえむ隼人に納得いかない。


「・・・ふーん。私なら奏を前にしたら即降伏するけどなぁ?だって見たら分かるでしょ?」




若頭としての奏は、それほどのオーラを纏っている。




会社社長としても、数々の交渉相手を前に、堂々と交渉し、契約を成立させてきた。



元一般人の私でも、彼が逆らってはいけない人間で、なおかつ悪いようにはしない相手であることは分かる。




私がそう考えてると、隼人の笑い声が聞こえる。




「ゆいかちゃん、世の中には馬鹿は沢山いるんだよ。

そんな奴らに、ワザワザ教えてあげに行ってるわけ。優しいでしょ?」



首をコテンと倒して言う隼人の目は笑っていない。




私が息を呑んでいると、そう言えば、と隼人の目は同じくコーヒーを飲む蓮へと向かった。

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