第23話
あたしに出来る事と言えば、由香里が早く元気になる事を祈る事くらいで。
そんな祈りと願いを込めながら由香里に言った言葉。
『胸よりも由香里の命が大事だから。胸は失っても由香里は由香里。何も変わらない。でも命を失ったら、それで全てが終わっちゃう』
泣きながら訴えた言葉に、由香里は綺麗な涙を流しながら応えてくれた。
『ありがとう』
と、一言。
その時、由香里の命と心を救ってくれたのは、俊ちゃんと同じ病院の外科医、真崎光太郎さん。
当時はまだ研修医だった光太郎さんは、由香里を誰よりも強く支えてくれていた。
そして光太郎さんは由香里に「乳房再建術」の提案をしてくれた。
でも由香里はそれをひとつ返事で断った。
「偽物のおっぱいなんかいらない。」と。
周りが説得にかかっても、由香里は断固として承諾しなかった。
そんな由香里に光太郎さんは「そのままの由香里ちゃんを愛してくれる人が必ずいる。」と優しく微笑んでいたんだ。
由香里の退院が決まった時、由香里は光太郎さんにどうしてもお礼がしたいからと食事に誘ってたけど、光太郎さんは患者と個人的に会うのを躊躇ってて。
ならばお互いに友達を誘って会食しようと食いつく由香里に、とうとう根負けした様で。
そして由香里に誘われて行った席で俊ちゃんに出会ったのだ。
忘れない、去年の9月半ばの事だった。
光太郎さんと俊ちゃんは高校に入ってからの同級生で親友らしく。
光太郎さんもカッコイイけど、あたしは俊ちゃんに一目惚れ。
でも告白どころか連絡先すら聞けずにいたあたしに、俊ちゃんの方からデートに誘ってくれて。
どうやら由香里経由であたしの番号を聞いたらしい。
そして10月に入ってすぐの初デートの日に、俊ちゃんから『付き合って』と言われて今に至るのです。
ちなみに、その1ヶ月後に由香里と光太郎さんは付き合い始めて、たまにダブルデートなんかもして。
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