第10話 不気味な森、異常な存在
食料を確保したあと、僕らは森へと足を運んでいた
「静かすぎる…道中には野生動物がいるはずなのに鳴き声すら聞こえない…」
「ここから森まで距離があるはずなのにここまでいないのは異常ですね。文献にあったスタンピードの前兆と合致しています」
「ハンスさん文字読めるんですね」
「神官になるために勉強していましたから、文字は読めますとも」
雑談しながら足を進めていると森が見えてくる
「……魔力が、あまりにも禍々しい……。もしかしたら、この森、ダンジョン化してるかも……」
ダンジョン化
ある地点に大量の魔力が蓄積され、外部に放出されないままでいると起こる現象。魔力の放出には、内部で魔法を使うか、自然に漏れ出すかの二択。危険度は魔力量によらず、完全にランダム
「アルラーが言うならほぼほぼ確定だろう。周りに気を付けながら進もうか」
「もしかしたらだからね?勘じゃないからね?!」
森へ足を踏み入れた瞬間、全身の毛が逆立つような寒気に襲われた。視線を感じる。どこかから、誰かが見ている。背中には、何か生暖かいものがぴったりと張りついているような──そんな、説明のつかない重さがのしかかっていた。けれどレオンたちはまるで何もないかのように振舞っており、これがダンジョンだと自分に言い聞かせた
「やはりダンジョン化しているね。それに、木が異常に硬いせいで目印もつけにくい。来た道に石を積んでおこう」
「魔力が結構濃いわね。体内魔力より空気中の魔力を使おうかしら」
「そうしてくれ。体内魔力は自然回復の速度が遅いから」
「ポーション飲めばいいのよ。味は最悪だけど…」
先へ進んでいるはずなのに、魔物の気配も、他の冒険者の姿も見えない。空を見上げても、光が差し込むだけで鳥の姿すらない。まるで僕らだけが、別の世界に隔離されたような感覚になる
数時間、休憩をはさみながら歩いているといきなりあたりが暗くなる
「うわっ!なにこれ!?」
「ダンジョンの外が暗くなると中も暗くなるんだ。迷宮型ならこうはならないけどね。今日はここで野営をしよう」
野営には布製の防水魔法が施されたテントを張り、石を積んで簡易かまどを作る
「肉はかたいけど野菜と一緒に煮込めばマシになる。塩は肉にしみてるから入れなくていいよ。貴重でもあるから」
「やっふぁりかふぁいわね」(やっぱりかたいわね)
「アルラーさん、口の中に食べ物が入った状態で喋らないでください。お行儀が悪いですよ」
「ふぁーい」
食事を終え、使った皿をかたずけていると遠くで狼の遠吠えが聞こえた
「結構遠いようだね。おそらくほかの冒険者が見つかったんだろう。ハンス、結界を張ってくれ。朝まで続くように」
「分かりました」
張られた結界は淡く光り、神々しさすらも感じられた
「これで朝まで耐えられると思います」
「ありがとうハンス。それじゃあ寝ようか」
そうして寝る準備が整い、レオンたちはすぐに寝てしまった
(スタンピードが発生するみたいだけど、いつ発生するんだ…?発生したらどうしよう…家に帰りたい…)
そんなことを思いながら、僕の瞼は自然と閉じていき、いつの間にか眠っていた
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
同時刻、森の奥深く──“それ”はモンスターを食い散らかし、見つけた冒険者を殺して喰らい、発生していた特殊個体すら血肉に変えていた。姿は人間に酷似しているが、目は血走り、身体は即座に再生され、理性のかけらもない雄たけびを上げながら森を走り回っていた……
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