第5.5話 ギルマスからの依頼

「来たか…」

ギルドマスターのいる部屋に俺たちが入るとそういってソファへと誘導してきた

「なぜ我々Aクラスが呼ばれたのかお伺いしても?」

「ああ、こいつを見てくれ」

そう言って差し出されたのは、やや大きめの――だが、一見するとただのゴブリンの耳だった

「少し大きいですね、ですがこれだけで呼ばれた理由は分かりません」

「単刀直入に言う。……“スタンピード”の可能性がある」

モンスターの大群が突如として発生し、街を襲う最悪の現象。それを示す言葉だった

「スタンピードだって!?」

俺たち全員が椅子から身を乗り出すように驚きの声をあげた。その様子を見たギルマスは、わずかに目を細めて口を開いた

「落ち着けお前ら。まだ確定じゃねえ。…が、調査するための材料になりうると判断したからだ。何か違和感でもなんでも感じたら即刻俺に報告しろ」

「そう言われても、即席パーティで動けというのは無茶ですよ!」

思わず声を荒げたクロムに対し、ギルドマスターは珍しく声を荒げ返す

「俺だって急に言いたくはねえ!…だが、スタンピードを事前に止められる可能性があるんだ。俺はそれに賭けるためにお前たちを呼んだんだ…分かってくれ…」

そういって俺たちに頭を下げてきた

「なっ!頭を上げてください!」

「そうですよ!私たちに頭を下げるなんて…!」

「…けどそれだけ真剣ってことなんでしょ?仕方ないわね…報酬2割増しで受けてあげる」

「それでスタンピードを止められるなら安いもんだ。どうかやってくれ」


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


それから俺たちは、問題の森へと向かう準備を整えた

「調査っつったってなにすりゃいいんだ?」

「モンスターの生息数と進化種の確認、出来ればダンジョンの発見ね」

「調査だけならAクラス5人もいらねえだろ…」

「不測の事態が起こるかもだからだと聞いているわ」

「へいへいそうですか」

「それじゃあパーティー構成を振り返ろうか。俺とクロムが前衛、アンが後衛、アベルが中衛、ヘレンが支援で良かったな?」

「ええ」「オーケーだ」「精一杯支援します!」「盾として守ろう」

こうして、俺たちは森へと向けて歩みを進めた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る