第2話 通じる言葉と落胆
しばらく彼らについて歩いていくと、やがて巨大な城壁がそびえ立つ街――いや、もしかすると国だと思うような場所に辿り着いた。
「でっけぇ……何メートルあるんだ、これ……」
『街に興味津々のようだね。あぁそうだ、街に入ったあとに彼の言葉をどうにかするはずだったよな?』
『ええ、言葉が分からないと不便ですもの』
相変わらずなにを喋っているのか分からない…というか異世界に来たら普通言葉分かるはずだろ!なんでいきなりハードモードやねん!
街に入るための列に並び、彼らの番がやってきた
『身分が証明できるものを出せ』
『はい、パーティの冒険者カードです』
『一人分足りないようだが、後ろの奴はなんだ?』
『彼は旅人で、身分証明の手段がないんだ。代わりに僕らが彼の身分を保証するよ』
『身分証明できるものがなければ銀貨3枚の支払いだ』
『分かりましたよ衛兵さん』
チャラチャラ...
『確かに頂いた。通ってよし!』
どうやら僕も入れるらしい。何か払っていたけど、少し申し訳ないな…
街に入って数分したら変な施設に連れてこられた
「…なにここ。冒険者ギルドじゃなさそうだし」
『アルラーよ、ここを開けて頂戴』
『見慣れない服装の方のためですか?あなたのような問題児が人のために動くとは…』
『うるさいわね!いいからとっとと入れて頂戴!』
『まあまあアルラー落ち着けって』
なんか女性の方が怒ってる…コワイ
施設の中に入ったら魔法陣かな?それが床に描かれた部屋に案内された
『さあここの真ん中に立って…て言葉通じないんだっけ。指差したら立ってくれるかしら』
「この真ん中に立てってことか……?うわー、いかにも怪しいし魔法ですって感じだけど……まあ、従うしかないか」
『なんか失礼なこと言われた気がする…』
彼女が呪文を唱えだすと、床に描かれた魔法陣がゆっくりと回転し始めた。
同時に、光のような文字が空中に浮かび上がり、部屋を淡く照らす。
(な、なんだこれ……きれい……)
弘人が目を見張っているうちに、魔法陣の輝きが収まり、文字も音も静かに消えていった。
「どう?言葉分かる?」
「……え、えっ? マジで通じてる!? す、すげぇ……」
(ほんとに分かる……言葉が分かる……! これ、ほんとに異世界の魔法なんだ……!)
「解決したわよー、さっさと行ってちょうだいこっちも忙しんだから」
「ありがとうアルラーのご友人よ!この恩は必ず」
「堅苦しすぎ、恩とかいらないから出てって」
「手厳しいな、ハハハ!」
(なんで怒られてるのに笑えるんだよ…異世界怖すぎだろ)
やっと言葉の壁が無くなった~!これからどうしようかな~、勇者として王都に呼ばれるかも…と考えていたら
「そういえばまだ名前を知らないな、君の名前はなんだい?僕はレオン。重剣士っていうジョブをやっている」
「アルラーよ、魔法を使って援護とか攻撃を行ってるわ」
「私はハンス、主に回復魔法を使うバトルヒーラーというジョブに就いています。近接もある程度は戦えるように鍛えてますが体力がないのが恥ずかしい限りです」
「ど、どうも。僕は弘人って言います。お察しの通り異世界からやってきました。僕みたいな異世界人って珍しいですか?」
「うーむ、少しかたいな。もう少し砕けてもらえるとありがたい。あと確かに珍しい部類だ。初めて見た」
「分かりm、分かった、これで大丈夫でs…大丈夫か?」
「ハハハ!そうそれでいい!これから頼むよ!」
これから頼むって、まだ来たばっかりで右も左も分からないのに、と思いつつ今日はもう遅いということで宿分のお金を借り、解散となった
「たしかここだったな」
ギィー...
「ごめんくださーい、どなたかいらっしゃいますかー?」
「はいはいなんでしょう?」
「一泊したいんですけど、いくらですか?」
「うちは一泊銀貨5枚、御飯付きなら銀貨6枚だよ」
「それじゃあ朝食も欲しいから御飯付きで!」
「毎度、部屋は201が開いてるからそこに泊まりな。これが鍵だ」
「ありがとうございます。そういえばお風呂とかって…」
「なに言ってんだい、風呂なんてのは貴族様とか金持ちの贅沢だよ。庶民は井戸水か川で流すもんさ。それでも入りたいってんなら、裏に井戸があるから勝手にしな」
「分かりました…」
風呂、やっぱりないのかあ…と落胆しつつ僕は深い眠りについた...
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